虚血性心疾患

エボロクマブの心血管イベント抑制 残存病変があるとより効果的

FOURIER試験では、エボロクマブで心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建)が有意に減少した(ハザード比:0.85)。(1)

ただ、費用対効果は薬価に見合ったものではないので、高容量のスタチンでLDLがさがらないからと言って、全例にPCSK9阻害薬を使うのは微妙かもしれない。(2)

Clinical Benefit of Evolocumab by Severity and Extent of Coronary Artery Disease: An Analysis from FOURIER.
Circulation. 2018 Apr 6. pii: CIRCULATIONAHA.118.034309. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.118.034309. [Epub ahead of print]

FOURIER試験の事前に設定されたサブ解析。

3つのサブグループに分けている。
1) 心筋梗塞発症から2年未満か否か
2) OMIの回数
3) 残存多枝

FOURIER試験のprimary endpointは心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+不安定狭心症による入院+冠動脈血行再建。secondary endpointは心血管死+心筋梗塞+脳梗塞。

残存多枝は1枝以上の見た目の狭窄で血行動態的な評価はではない。

primary endpointでは、3つのサブグループで交互作用のPが有意だったものは、MI発症から2年未満と残存多枝病変あり。

エボロクマブ群 vs プラセボ群
MI発症から2年未満
13.5% vs 16.9% ハザード比:0.80 95%CI:0.71-0.91

残存多枝あり
15.8% vs 19.4% ハザード比:0.79 95%CI:0.69−0.91

primary endpointからソフトエンドポイントを除いたsecondary endpoint(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞)では、3つのサブグループで交互作用のPが有意だったものは、残存多枝病変ありのみ。

残存多枝あり
9.2% vs 12.6% ハザード比:0.70 95%CI:0.58−0.84

【まとめと感想】
エボロクマブをFOURIER試験で対象になっている患者すべてに処方するのは、費用対効果的には微妙。このサブ解析から、MI発症早期と残存多枝病変があればエボロクマブの費用対効果は高られそう。

個人的には、ハードエンドポイントのみ含んでいるsecondary endpointで唯一有意な差があった残存多枝病変のみだったので、残存多枝病変があればエボロクマブをより積極的に使ってもいいと思います。

(1) N Engl J Med 2017;376:1713-1722
(2) JAMA. 2017;318(8):748-750