心臓手術

OPCAB(心拍動下冠動脈バイパス術)の長期生存率と再血行再建率

Long-Term Survival and Freedom From Reintervention After Off-Pump Coronary Artery Bypass GraftingA Propensity-Matched Study
Circulation. 2016;134:1209-1220

《要約》
背景
心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)の長期的なアウトカムは議論の的である。我々の施設では15年以上、OPCABと人工心肺を使用した冠動脈バイパス術(on-pump CABG)を行ってきた。我々の仮説は、OPCABとon-pump CABGに長期的なアウトカム(死亡と再血行再建)の差がないことである。

方法
2001年から2015年までにCABGの単独手術について、後ろ向きに検討した。プロペンシティスコアで調整後にITT解析を行った。OPCAB5882例、on-pump CABG7344例の合計13226例で、フォローアップ期間の中央値は6.2年であった。

結果
OPCAB群では、76/5882例(1.3%)でCPBへの切り替えがあった。1年、5年、10年生存率は両群で似通っていた(OPCAB vs CPB:96.7%、87.9%、72.1% vs 96.2%、87.4%、72.8%)。長期生存率(adjusted hazard ratio1.03、95%CI0.94−1.11)、生存率と再血行再建回避率pl0(HR0.98, 95%CI0.92-1.06)に有意差はなかった。OPCABではEuroSCOREsが高く(2.81vs2.73、P=0.01)、グラフト数が少なかったが(3.0±0.9vs3.3±0.9、P<0.001)、動脈グラフトは多かった(45.9%vs8.4%、P&;t;0.001)。OPCABは、術者がトレイニーであることが多く、心筋逸脱酵素の上昇が低く、在院日数が短く、心筋梗塞などの合併症が少なかった。

結論
我々の施設では、OPCABはon-pump CABGと長期成績は似通っていた。on-pump CABGへの切り替え率が低いことから、OPCABは安全であると言えるだろう。グラフト数は統計的には差があるが、臨床的には同等で、on-pump CABGと同等の生存率と再血行再建回避率であると明らかになった。

◇この論文のPICOは?
P:初回のCABG
I:OPCAB
C:on-pump CABG
O:生存率と再血行再建回避率

◇デザイン、対象、観察期間
・後ろ向きコホート研究
・2001年12月〜2015年10月
・プロペンシティスコアマッチ
・11078例(OPCAB5539例、on-pump CABG5539例)
・観察期間:6.2年(中央値)

characteristics1
characteristics2
OPCABの方が意外にEFが悪い人が多く、unstableな症例が多い。周術期のカテコラミンの使用率は高い。

◇結果
kaplan-meier1
生存率に有意差なし。

kaplan-meier2
生存率と再血行再建回避率の複合アウトカムにも有意差なし。

◇批判的吟味
・off-pumpとon-pumpを比較したものの中では長期のデータ。
・off-pumpの技術にはlearning curveがあるようで、off-pumpを始めた初期のデータは含んでいない。
・後ろ向きなので結論めいたことは言えない。

◇感想
off-pumpとon-pumpのどちらがよいかという、未だ結論が出ていない話題。約1万例の6.8年の後ろ向きのデータでは、off-pumpとon-pumpに生存率・再血行再建回避率に差はないという結果。

CORONARY試験など他のRCTとか、Cochrane Systematic Reviewでも、off-pumpとon-pumpの生存率に差がないみたいなので、たぶんどっちも変わらないってことでいいのでしょう。心拡大が著明とか、心膜が癒着しているような症例はon-pumpで、ということでしょうか。