虚血性心疾患

生体吸収性スキャフォールドABSORB 1年のアウトカム(メタ解析)

1-year outcomes with the Absorb bioresorbable scaffold in patients with coronary artery disease: a patient-level, pooled meta-analysis.
Lancet. 2016 Jan 25. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
生体吸収性スキャフォールド(BVS)は金属製の薬剤溶出性ステントと(DES)比較し、PCIの長期的なアウトカムを改善する可能性がある。留置後1年以内のBVSが、DESと同様に安全で有効かどうかは明らかではない。

方法
北米・欧州・アジア太平洋地域の301の大学病院と医療センターで行われた4つの無作為化試験のプール解析を行った。安定狭心症または安定させた急性冠症候群3389例を含んでいる。これらの患者は、Absorb(エベロリムス溶出性BVS)とXience(エベロリムス溶出性コバルトクロムステント)に割り付けられた。Absorb群2164例、Xience群1225例であった。主要評価項目は全死亡・全心筋梗塞、全血行再建を患者志向複合エンドポイントに、標的病変不全(心臓死、標的血管心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建)をデバイス志向複合エンドポイントとした。すべての解析はITT解析が行なわれている。

結果
患者志向複合エンドポイントは、Absorb群とXience群で有意差はなかった(RR:1.09、95%CI:0.89−1.34)。同様に、デバイス志向複合エンドポイントも群間差はなかった(RR:1.22、95%CI:0.91−1.64)。標的血管心筋梗塞はAbsorb群で有意に多かったが(RR:1.45、95%CI:1.02−2.07)、周術期心筋梗塞とデバイス血栓症の増加はなかった(RR:2.09、95%CI:0.92−4.75)。全死亡と心臓死、全心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建、全血行再建はAbsorb群とXience群で違いはなかった。その結果は、多変量解析を行った後や多くのサブグループでも同様で、またフォローアップ期間が1年未満の2つの無作為化試験を加えた場合のsensitivity analysisでも同様であった。

結論
このメタ解析で、1年のフォローアップ期間で、AbsorbとXienceの患者志向およびデバイス志向の有害事象に差は認めなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:安定狭心症、安定させた急性冠症候群
I:Absorbの留置(Absorb群)
C:Xienceの留置(Xience群)
O:全死亡・全心筋梗塞、全血行再建を患者志向複合エンドポイントとした。心臓死、標的血管心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建をデバイス志向複合エンドポイントとした。

4つのRCTをMantel−Haenszel fixed effect modelを用いて統合している。
異質性についてはCochran’s Q testとI2統計量を用いて検討されている。

◯結果
result

◯感想/批判的吟味
BVS(Absorb)はXienceと比較すると、ストラットが厚く柔軟性に欠けるため、留置後早期の血栓症のリスクが高い。糖尿病、内腔(reference)が小さい、石灰化、B2/C病変ではそのリスクが有意に高くなる。そういった症例を除けば、長期的なアウトカムの改善は期待出来るということだろう。