虚血性心疾患

NSTE-ACSへの早期侵襲的治療にベネフィットはあるのか

Early Invasive Versus Selective Strategy for Non-ST-Segment Elevation Acute Coronary Syndrome: The ICTUS Trial.
J Am Coll Cardiol. 2017 Apr 18;69(15):1883-1893

◇この論文のPICOはなにか
P:非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)
I:early invasive strategy
C:selective invasive strategy
O:10年間での全死亡、心筋梗塞

early invasive strategy
ランダム化から24−48時間以内に冠動脈造影を行い、血行再建を行う。

selective invasive strategy
退院前の検査で誘発虚血がある、もしくは難治性狭心症であれば、血行再建を行う。

inclusion criteria:次の3つすべてを満たす:20分以上続く胸痛、トロポニンT上昇(≧0.03g/l)、心電図での虚血性変化(ST低下、一時的なST上昇、陰性T波)または冠動脈疾患の既往(OMI、PCIまたはCABGの既往)

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:オランダ
登録期間:2001年7月〜2003年8月
観察期間:10年
盲検化:open-label
症例数:1200例(early invasive strategy:604例、selective invasive strategy:596例)
追跡率:両群とも約94%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Eli Lilly, Sanofi/Synthelabo, Sanofi, Pfizer, Medtronic)

◇患者背景

(本文から引用)

平均年齢62歳、75%が男性。

入院中のCAG試行率、血行再建率はそれぞれ
early invasive strategy 98%、76%
selective invasive strategy 53%、40%

◇結果

(本文から引用)

PCIに関連したMIだけが、early invasive strategyで有意に多いが、自然発生のMI、心臓死、全死亡に差はない。

◇感想
日本の現状であれば、この試験の対象になっているようなNSTE-ACS(20分以上胸痛が続いて、トロポニン陽性で、心電図変化あり)だと、即CAG・PCIという感じになるだろう。生命予後が短いとか、大きな手術の直後とか、高齢・寝たきりみたいな場合には、カテをやらないこともある。

この試験同様、NSTE-ACSを対象にearly invasive strategyとselective invasive strategyを比較した試験に、FRISC Ⅱ試験、RITA-3試験がある。この3つの試験で結果が一致しているわけではないが、early invasive strategyに長期的なbenefitがないというICTUS試験の結果は、ちょっと考えさせられる。

ただ、低分子ヘパリンやGPⅡb/Ⅲaなど、日本では使用できない薬剤も使われているので、そこらへんで違いはあるかもしれない。