虚血性心疾患

STEMIの残存病変に対するPCIの生命予後改善効果 CREDO-Kyoto AMIレジストリから

Culprit Vessel-Only vs. Staged Multivessel Percutaneous Coronary Intervention Strategies in Patients With Multivessel Coronary Artery Disease Undergoing Primary Percutaneous Coronary Intervention for ST-Segment Elevation Myocardial Infarction.
Circ J. 2016 Jan 25;80(2):371-8.

《要約》
背景
リアルワールドの多枝病変を有するSTEMIで、staged PCIの治療戦略について評価した。

方法・結果
CREDO-Kyoto AMI registryの中で、primary PCIを行った多枝病変のSTEMI2010例を解析した。96例(4.8%)は急性期に多枝のPCIが行われ、多くの症例(1914例、95.2%)では責任病変のみPCIが行われた。699例(急性期に多枝のPCIが行われた症例、Killip≧3、90歳以上、90日以内のCABGや臨床的イベント)を除外した後、681例が造影上の有意狭窄に対し90日以内にPCIを行い(staged PCI群)、630例はstaged PCIが行われなかった(culprit−only PCI群)。5年の調整後の全死亡率はstaged PCI群で有意に低かった(9.5% vs 16.0%, HR:0.69, 95%CI:0.50-0.96)。staged PCI群で心筋梗塞と血行再建のリスクが低かった。

結論
多枝病変を有するSTEMI患者において、造影の有意狭窄に対するstaged PCIは、5年死亡率の改善と関連がある。

◯論文のPECOはなにか
P:primary PCIを行ったSTEMIで、残存狭窄を有する症例
E:造影上の有意狭窄に対するstaged PCI(staged PCI群)
C:primary PCIのみ(culprit-only PCI群)
O:5年間の全死亡(primary endpoint)
  心臓死、非心臓死、心筋梗塞、脳梗塞、血行再建(secondary endpoint)

inclusion criteria:発症24時間以内にprimary PCIが行われた症例、
exclusion criteria:研究への参加拒否、CABGの既往、急性期にCABGが行われた症例、non-STEMI、発症不明、一枝病変

◯結果
デザイン:前向きコホート研究
登録期間:2005年1月〜2007年12月
フォローアップ期間:5年間
地域:日本
症例数:2010例
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:Cox比例ハザードモデル

Kaplan-Meier
result
(すべて本文から引用)

◯感想/批判的吟味
STEMIの残存病変に対するPCIが生命予後を改善したというRCTはない。コホート研究であり、調整できない交絡因子はあると思われる。

生命予後を改善する可能性があるなら、どのような患者で、どのようなタイミングで、どのような方法で虚血の評価をするかなどがわかっていくといいと思う。今後の検証に期待、といったところでしょうか。