Invasive versus conservative strategy in patients aged 80 years or older with non-ST-elevation myocardial infarction or unstable angina pectoris (After Eighty study): an open-label randomised controlled trial
Lancet 12 January 2016, online first
背景
非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)と不安定狭心症(UAP)は、しばしば高齢者の入院の原因になる。しかしながら、高齢者を対象とした臨床試験は十分でなく、高齢者はガイドラインに従ってこれらの治療を受けることは稀である。我々は、高齢者に対し早期の侵襲的治療戦略と保存的治療戦略の有効性を検証した。
方法
オープンラベル、無作為化、多施設共同研究である。ノルウェーの南東地域の16施設にNSTEMIまたはUAPで入院した80歳以上の患者を、侵襲的治療(PCI、CABG、薬物療法の判断のための早期の冠動脈造影)と保存的治療(至適薬物療法のみ)に無作為に割り付けた。主要評価項目は心筋梗塞、緊急血行再建、脳梗塞、死亡の複合エンドポイントで、2010年12月10日から2014年11月18日までで評価する。ITT解析を行った。
結果
2010年12月10日から2014年11月18日までに登録され1.53年(中央値)フォローアップされ、主要評価項目はinvasive群で93/229例(40.6%)、conservative群で140/228例(61.4%)であった(HR:0.53, 95%CI:0.41−0.69)。invasive群で5例、conservative群で1例の脱落があった。ハザード比は、心筋梗塞で0.53(95%CI:0.35−0.76)、緊急血行再建で0.19(95%CI:0.07−0.52)、脳梗塞で0.60(95%CI:0.25−1.46)、死亡で0.89(95%CI:0.62−1.28)であった。invasive群で大出血が4例(1.7%)、小出血が23例(10.0%)、conservative群で大出血が4例(1.8%)、小出血が16例(7.0%)であった。
結論
80歳以上のNSTEMI、UAPでは、侵襲的治療が保存的治療に比べ複合的なイベントの減少に優れている。高齢者では侵襲的治療の有効性は弱くなる。出血に関しては、2つの治療戦略で違いはない。
◯この論文のPICOはなにか
P:80歳以上のNSTEMI、UAP
I:早期冠動脈造影とそれに続くPCI・CABG・薬物療法(invastive群)
C:至適薬物療法(conservative群)
O:心筋梗塞、緊急血行再建(再梗塞、難治性狭心症、悪性の心室性不整脈、心不全増悪によるもの)、脳梗塞、死亡の複合エンドポイント
exclusion criteria:臨床的に不安定、心原性ショック、持続する出血、並存疾患により生命予後12ヶ月以内、重大な精神疾患、高度の認知症
◯baselineは同等か
同等かどうかの記載はない。
OMI・血行再建の既往(PCI/CABG)が40%、3/4がkillipⅠ度、EF50%と比較的心機能が保たれている方が半分、AFが20%、Cr1.1、血行再建を行ったのはinvasive群50%で90%が頭骨動脈アプローチ。
◯結果
地域:ノルウェーの南東地域
登録期間:2010年12月10日〜2014年11月18日
観察期間:1.53年(中央値)
無作為化:ブロックランダム化、層別化、封筒法
盲検化:open-label
必要症例数:450例(conservative群で6ヶ月後に死亡と心筋梗塞が21%、50%の相対リスク低下、αlevel5%、power80%、脱落も考慮)
症例数:457例(invasive群:229例、conservative群:228例)
解析:ITT解析
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invastive群で冠動脈造影を行わなかったのは9例(4%)。
conservative群ではすべての症例で冠動脈造影を行っていない。
◯感想/批判的吟味
・観察期間は1年半と心血管イベントを評価するには短めだが、80歳以上の高齢者なのでそれぐらいの期間が妥当かもしれない。
・心筋梗塞や緊急血行再建は、conservative群で有意に多く、それで差がついている。
・死亡は両群で差はない。
・抗凝固療法はconservative群で少ないものの、抗血小板薬の使用率に差はなく、出血も同程度であった。
高齢者のSTEMIでも今までの観察研究からPCIの有効性が示されており、AHAガイドラインでも、高齢であるということだけでは緊急血行再建の禁忌にはならないと記載されている。このような高齢の患者では、様々な併存疾患があるため、年齢だけを理由に血行再建を行わない場合、その後の全身管理に難渋し入院期間が長くなってしまいがちである。また、それは退院後のQOL低下にもつながる。NSTEMIであっても、発症早期の冠動脈の評価を行い血行再建の必要性について検討する必要がある。