虚血性心疾患

PTCA以前 心筋梗塞への酸素投与は死亡率を上げる可能性

Controlled trial of oxygen in uncomplicated myocardial infarction.
Br Med J. 1976 May 8;1(6018):1121-3.

《要約》
心筋梗塞と考えられる連続200症例を対象に、入院後24時間にわたりMCマスクで酸素もしくは空気を投与する、無作為化、二重盲検、比較対照試験を行った。43人は、その後心筋梗塞ではないことが確認され、解析から除外した。残りの酸素群、空気群はPaO2とAST値以外は同等であった。死亡率、不整脈の出現、鎮痛薬の使用、収縮期時間に群間差はなかったが、洞性頻脈は酸素群で多かった。合併症のない心筋梗塞に対しルーチンで酸素投与を行う有効性はない。

◯この論文のPICOはなにか
P:心筋梗塞と考えられる患者
I:MCマスクを用いて入院後24時間にわたり酸素6L/分で投与する(酸素群)
C:MCマスクを用いて入院後24時間にわたり空気6L/分で投与する(空気群)
O:primary endpointの設定なし。AST値、PaO2、死亡、入院期間、鎮痛薬の使用、不整脈などについて検証

inclusion criteria:65歳以下
exclusion criteria:右心不全・左心不全、慢性気管支炎、肺気腫、なんらかの呼吸障害、心停止、心原性ショック

心筋梗塞の診断
胸部症状、AST上昇、心電図で連続する2誘導以上のST-T変化のうち、2つ以上を満たすもの

◯結果
空気群95例、酸素群105例がランダム化された。
心筋梗塞ではなかった症例を除いた空気群77例、酸素群80例を解析した。
table1
table2
(いずれも本文より引用)

◯感想/批判的吟味
1977年にグルンチッヒによってPTCAが行われる数年前の話なので、心筋梗塞に対する治療は現在と全く異なる。そして、primary endpointや必要な症例数を設定し行われた試験ではない。しかし、死亡やAST値(梗塞サイズの推定)、心室性不整脈が多く、酸素投与の有害性を示唆していると考えられる。

健常人に酸素投与すると、血管抵抗を上昇し、代償として心拍出量が低下することがわかっている。心筋梗塞でも同様の反応が起こると考えられている。心不全やショックなど合併症のない、酸素化が保たれた心筋梗塞患者にルーチンで酸素投与する必要はない。