ステントが登場する以前のPCIは、冠動脈を拡張させるデバイスはバルーンのみであり、急性閉塞5%、再狭窄40%以上と治療成績は不良であった。
再狭窄は、拡張により冠動脈が損傷することで、血管平滑筋細胞と細胞外マトリックスの増殖することで起こるとされる。ベアメタルステントの登場と抗血小板薬の使用により、急性閉塞は大きく減少したが、再狭窄は30%程度で見られていた。
ステント留置後の再狭窄を抑制するためのステントとして、DESが開発された。DESは再狭窄抑制効果のある薬物、薬物の溶出をコントロールするポリマー、そしてステントプラットフォームの3つの要素で構成される。
第1世代DESでは、シロリムスという免疫抑制薬を使用したCypherステントと、パクリタキセルという抗がん剤を使用したTAXUSステントがある。ステントの表面にポリマーをコーティングし、それに薬剤をしみこませることにより、薬剤の溶出をコントロールする。第1世代DESにより再狭窄率は大きく低下したが、それでもlate catch up(晩期再狭窄)とステント血栓症の問題があった。
第1世代DESの植え込み後では、上記の免疫抑制薬や抗がん剤により新生内膜の増殖が抑制されるため、ステントが血管内でむき出しの状態になっていることがある。また、ポリマーによる炎症(好酸球の浸潤)の惹起も問題視されており、炎症によって血管壁の構造に変化を来したり(BMSでも炎症は惹起されるが、第1世代DESの場合、より強い炎症が持続する)、ステント周囲に破たんしやすいプラークが形成される。血管壁の構造変化は、冠動脈造影ではステントの外側への造影剤の染み出し(PSS:peri-stent contrast staining)や冠動脈瘤として、血管内超音波(IVUS)では、ステントの不完全圧着(late acquired malapposition)として認識される。
ステント血栓症の背景には、このようなステントの血管内での露出、不完全圧着、ステント周囲の破たんしやすいプラークがあり、抗血小板薬の中断や外科的手術などがそのトリガーとなり、ステント血栓症を引き起こすと推測される。
現在使用されている第2世代DESでは、ポリマーを改良すること(生体適合性の高いポリマーや生体吸収性ポリマーの使用)により平滑筋細胞の増殖を抑制しながらも内皮細胞の障害を少なくし、ステント血栓症の発症を低減させている。
参考HP
循環器トライアルデータベース 薬剤溶出性ステント
薬剤溶出性ステントの現状
冠動脈インターベンション治療の進歩
次世代の薬剤溶出性ステントとその可能性