心臓手術

FFRとグラフト開存率

Does stenosis severity of native vessels influence bypass graft patency? A prospective fractional flow reserve-guided study.
Ann Thorac Surg. 2007 Jun;83(6):2093-7.

《要約》
背景
冠動脈バイパス術(CABG)後に、グラフトの閉塞あるいは狭窄が起こることがある。重大でない狭窄に対するバイパスは早期のグラフト不全の要因になるという仮説を検証するため、FFRを用いた造影的・機能的な冠動脈狭窄と、CABG後1年でのグラフト開存との関連を前向きに検証した。

方法
中等度狭窄を少なくとも1枝以上を有し、CABGを行う患者164例が対象。バイパスするすべての冠動脈でFFRの測定を行った。外科医はその測定結果を知らされていない。CABG1年後にグラフト開存を検証するため冠動脈造影検査を行った。

結果
機能的な有意狭窄に対するバイパスのグラフト閉塞は8.9%、機能的な非有意狭窄のそれは21.4%であった。グラフト閉塞の有無で、狭心症分類や再血行再建に群間差はなかった。

結論
機能的な有意狭窄に対するグラフトの開存率は、機能的な非有意狭窄のそれに比べて著しく高かった。しかし、狭心症や再血行再建はグラフト開存の有無でも変わらず、臨床的妥当性はなかった。

◯論文のPICOはなにか
P:50%−70%の中等度の狭窄を1枝以上有するCABG施行予定の患者
I/C:FFRの測定
O:CABG1年後のグラフト開存率

◯予後、病因、危険因子、害、予測ルールのいずれをみる研究か
予後因子をみる研究。

◯追跡期間はどれくらいか
1年間。

◯結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか
164例のうち、2例がCABGを拒否し、1例が術前に死亡、1例が術後に左心不全のため死亡している。CABG1年後にFFRを測定したのは、そのうち153例(525病変)であった。

◯outcomeの観察者が危険因子についてmaskingされているか
記載なし。

◯交絡因子の調整が行なわれているか
on-pump/off−pump、血管径、術後の抗血栓療法、グラフトの種類などがグラフトの開存に影響があるが、それらについての調整は行われていない。

◯結果
FFR≦0.75 vs FFR>0.75
グラフト開存率:8.9% vs 21.4%
result1

FFRとグラフト開存率には相関関係がある。
result2
(table、figureはすべて本文から引用)

◯感想/批判的吟味
グラフト開存率は、on-pump/off−pump、血管径、術後の抗血栓療法、グラフトの種類などの影響を受けるが、それらの調整は行われていないが、FFRが高い(つまり、冠血圧が高い)とグラフトがつまりやすいというのは感覚的にうなずける話。