虚血性心疾患

JELIS試験 冠動脈疾患に対するEPAの効果

Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis.
Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.

《要約》
背景
長鎖n-3脂肪酸が冠動脈疾患の死亡率を改善することが、疫学や臨床のエビデンスで示されている。多くの魚を消費している日本人の高コレステロール血症患者において、エイコサペント酸(EPA)の長期投与が冠動脈イベントの予防に有効か検証した。

方法
1996年から1999年の3年間、総コレステロールが6.5mmol/L(250mg/dl)以上の18645例が登録された。スタチンに加え1日1800mgのEPAを内服する群と、スタチンのみの群に無作為に割り付け、5年間フォローアップを行った。主要評価項目は、心臓突然死、致死的または非致死的心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈形成術、ステント留置、冠動脈バイパス術である。ITT解析を行った。

結果
平均フォローアップ期間は4.6年で、主要評価項目はEPA群で262例(2.8%)、対照群で324例(3.5%)で、19%のリスク低下を認めた(P=0.011)。治療後のLDLコレステロールは両群で25%低下し、4.7mmol/Lであった。血清LDLコレステロール値は、冠動脈イベント抑制に重要な要因ではなかった。不安定狭心症と非致死的冠動脈イベントもまたEPA群で有意な低下がみられた。心臓突然死と冠動脈死に群間差はなかった。心筋梗塞二次予防のサブグループで、EPA群で冠動脈イベントは19%減少していた(EPA群158例[8.7%] vs 対照群197例[10.7%]、P=0.048)。心筋梗塞一次予防のサブグループでは、EPA群で冠動脈イベントは18%減少していたが、統計学的有意差はなかった(EPA群104例[1.4%] vs 対照群127例[1.7%]、P=0.132)。

結論
EPAは高コレステロール血症の患者において、冠動脈イベント、特に非致死的冠動脈イベントの予防に有望な治療である。

◯この論文のPICOはなにか
P:総コレステロール6.5mmol/L(250mg/dl)以上、LDLコレステロール4.4mmol/L(170mg/dl)以上の高コレステロール血症の患者
I/C:EPA1800mg/日の内服の有無
O:5年間の心臓突然死、致死的または非致死的心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈形成術、ステント留置、冠動脈バイパス術

exclusion criteria:6ヶ月以内の急性心筋梗塞、不安定狭心症、重篤な不整脈・心不全・心筋症・弁膜症・先天性心疾患、6ヶ月以内の冠動脈血行再建、重篤な肝疾患・腎疾患、悪性疾患、コントロール不良の糖尿病、ステロイドなどの薬剤性の高コレステロール血症、出血性疾患。

◯ランダム化されているか
置換ブロック法によるランダム化。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢61歳、69%が女性、LDLコレステロール180mg/dl、HDLコレステロール58mg/dl、糖尿病6%、喫煙者6%、内服薬についての記載なし。

◯症例数は十分か
primary endpointは、対照群のうち一次予防のサブグループで0.58%/年、二次予防のサブグループで2.13%/年発生し、EPAによるリスク減少が25%と仮定し、一次予防と二次予防の比率は4:1とした。αlevel0.05、power80%として、必要症例数を算出しているが、いくつかは記載がない。

◯盲検化されているか
PROBE試験(open-label)である。outcome評価者は盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
割り付けられた症例すべてが解析に含めるITT解析が行なわれている。

◯結果
二次予防のサブグループは、OMI1050例、AP2903例、PTCA・PCI・CABGの既往895例。
平均観察期間4.6年。
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
・企業がスポンサー
・企業は解析には加わっていない
・primary endpointに、重要度が異なるものをハードなものからソフトなものまで詰め込みすぎではないか
・primary endpointで有意差がついているが、不安定狭心症で差がついている(PROBE試験でソフトエンドポイントによる有意差)