抗血栓療法

静脈血栓塞栓症 ダビガトラン(プラザキサ®)の効果は乏しい RE-MEDY試験・RE-SONATE試験

Extended use of dabigatran, warfarin, or placebo in venous thromboembolism.
N Engl J Med. 2013;368:709-18

《要約》
背景
モニタリングが不要である固定容量のダイガトランが静脈血栓塞栓症(VTE)の治療に適しているかもしれない。

方法
静脈血栓塞栓症に対しダビガトラン(150mg、1日2回)とワルファリンとプラセボを、二重盲検無作為化試験で比較した。治療期間は最低3ヶ月間とした。

結果
VTEの再発は、ダビガトラン群26/1430例(1.8%)、ワルファリン群18/1426例(1.3%)であった(hazard ratio:1.44, 95%CI:0.78-2.64)。大出血は、ダビガトラン群12/1430例(0.9%)、ワルファリン群25/1426例(1.8%)であった(hazard ratio:0.52, 95%CI:0.27-1.02)。大出血と臨床的に関連した非大出血はダビガトラン群で少なかった(hazard ratio:0.54, 95%CI:0.41-0.71)。急性冠症候群はダビガトラン群13例(0.9%)、ワルファリン群3例(0.2%)であった(P=0.02)。プラセボとの比較では、VTEの再発はダビガトラン群3/681例(0.4%)、プラセボ群37/662例(5.6%)であった(hazard ratio:0.08, 95%CI:0.02-0.25)。大出血はダビガトラン群2例(0.3%)、プラセボ群0例であった。大出血と臨床的に関連した非大出血は、ダビガトラン群36例(5.3%)、プラセボ群12例(1.8%)であった(hazard ratio:2.92, 95%CI:1.52-5.60)。急性冠症候群は、ダビガトラン群とプラセボ群でそれぞれ1例であった。

結論
ダビガトランはVTEの治療として有効であり、大出血または臨床に関連した非大出血のリスクはワルファリンより低く、プラセボより高かった。

◯この論文のPICOはなにか
P:静脈血栓塞栓症
I:ダビガトラン150mg、1日2回の内服(ダビガトラン群)
C:実薬対照試験ではワルファリンの内服(ワルファリン群)、プラセボ対照試験ではプラセボの内服(プラセボ群)
O:primary efficacy endpontは症候性VTEの再発(VTEもしくはVTEに関連した死亡)
primary safety endpointは大出血と臨床的に関連した非大出血

手順:実薬対照試験では、ダビガトラン群とワルファリン群に1:1に割り付け、ダビガトラン群では150mgを1日2回内服する。それぞれの群でプラセボを、またダビガトラン群ではシャムINRを用いて盲検化を維持する。PT−INRは2.0−3.0でコントロールする。また、プラセボ対照試験では、ダビガトラン群(150mg、1日2回)とプラセボ群に割り付け、凝固のモニタリングは行わない。実薬対照試験では当初試験期間は18ヶ月としていたが、途中でプロトコールの変更(試験期間とサンプルサイズ)があり、最大36ヶ月まで延長している。

◯ランダム化されているか
interactive voice-response systemを用いてランダム化されている。

◯baselineは同等か
実薬対照試験では、冠動脈疾患、糖尿病、高血圧がダビガトラン群で有意に多かった。
以下、ざっくりと。
年齢55歳、アジア人8%、体重86kg、CCr104ml/min、1/3にPEあり、血栓性素因20%、悪性腫瘍4%、内服期間18ヶ月、アドヒアランス98%。

◯症例数は十分か
primary efficacy endpointが2.0%と仮定し、非劣性マージンはハザート比2.85、リスク差2.8%とし、power85%、αlevel0.05として、必要症例数は2000例と算出されている。途中でサンプルサイズの変更があり、必要症例数は2850例となっている。ダビガトラン群1430例、ワルファリン群1426例で必要症例数は満たしている。

◯盲検化されているか
double blind。実薬対照試験では、プラセボとシャムINRを用いて盲検化が維持されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。

◯結果
ワルファリンのTTR65.3%。
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
・企業(ベーリンガーインゲルハイム)がスポンサー
・データの解析は企業が行っている
・プロトコールの変更

ほかのDOAC(Xa阻害薬)は、VTEの再発がワルファリンに対し非劣性であっても、少ない傾向がある。そして、出血に関しては有意に少ない。しかし、ダビガトランでは、非劣性といってもワルファリンに比べ多い傾向があり、出血は少ない傾向にあるが有意な差はない。もちろん、対象が異なるので一概に比較はできないが、少なくともこの試験から判断するに、ダビガトランをあえて使用する理由はなく、ワルファリンで十分であろう(ワルファリンに比べ非劣性マージン分、劣る可能性がある)。また、Xa阻害薬はワルファリンより出血リスクが低くなるため、Xa阻害薬に関しては使用するメリットは大いにある。