Oral apixaban for the treatment of acute venous thromboembolism.
N Engl J Med. 2013;369:799-808
背景
経口Xa阻害薬であるアピキサバンが静脈血栓塞栓症の治療を単純化するかもしれない。
方法
無作為化二重盲検試験で、5395例の静脈血栓塞栓症を対象に、アピキサバンと従来の治療を比較した。アピキサバンは10mgを1日2回、7日間投与し、その後6ヶ月間にわたり5mgを1日2回投与する。従来の治療はエノキサパリンの皮下注とそれに続くワルファリンの投与である。主要有効性評価項目は静脈血栓塞栓症の再発と静脈血栓塞栓症による死亡である。主要安全性評価項目は大出血である。
結果
主要有効性評価項目はアピキサバン群で59/2609例(2.3%)、従来療法群では71/2635例(2.7%)であった(相対リスク:0.84、95%CI:0.60-1.18)。非劣性の基準は相対リスク<1.8、リスク差<3.5%と事前に定められており、アピキサバンは従来療法に対し非劣性であった。大出血はアピキサバン群で0.6%、従来療法群で1.8%であった(相対リスク:0.31, 95%CI:0.17-0.55)。大出血と臨床的に関連する非大出血は、アピキサバン群で4.3%、従来療法群で9.7%であった(相対リスク:0.44, 95%CI:0.36-0.55)。
結論
静脈血栓塞栓症の治療のおいて、アピキサバン単独の内服は従来療法に対し非劣性であり、出血が有意に少なかった。
◯この論文のPICOはなにか
P:症候性DVT/PE
I:アピキサバンの投与(アピサキバン群)
C:エノキサパリンとワルファリンの投与(従来療法群)
O:primary efficacy endpointは6ヶ月間の症候性VTEの再発、VTEによる死亡
primary safety endpointは6ヶ月間の大出血
inclusion criteria:18歳以上、症候性のDVT(膝窩静脈より近位のもの)、症候性のPE(DVTの有無は問わない)
exclusion criteria:活動性出血、出血のハイリスク患者、エノキサパリン・ワルファリンに対する禁忌、悪性腫瘍を有し低分子ヘパリンの長期使用が予定されている患者、6ヶ月未満の抗凝固療法が予定されている患者、抗凝固療法が長期間必要な患者、DAPT、1日165mg以上のアスピリンの内服、CYP450 3A4阻害薬の使用、36時間以上のヘパリン投与、Hb<9g/dl、PLT<10万/mm2、Cr>2.5mg/dl、CCr<25ml/min
手順:ランダム化の後24時間以内に割り付けられた治療が行われる。アピキサバン群は最初の7日間はアピキサバン10mgを1日2回内服し、その後6ヶ月間は5mgを1日2回内服する。従来療法群は最初の5日間はエノキサパリン1mg/kgを12時間おきに皮下注し、並行してワルファリンの内服を開始し6ヶ月間継続する。ワルファリンはPT−INR2.0−3.0を維持するようにコントロールする。
◯ランダム化されているか
interactive voice-response systemによりランダム化を行う。
◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢57歳、体重85kg(≧100kgは20%)、1/3がPE、DVTの3/4が大腿静脈より近位の血栓、extensive PEは40%、VTE再発症例15%。
◯症例数は十分か
従来療法の治療効果の70%である、相対リスク1.8、リスク差3.5%を非劣性マージンとしている。また、従来療法群でprimary efficacy endpointが3%発生し、15%で治療の中断があると仮定し、power90%、αlevel0.05として、必要症例数は5400例と算出されている。
◯盲検化されているか
double blind(それぞれの薬剤のプラセボが用いられ、盲検化が維持されている)。outcome評価者も盲検化されている。
◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
割り付けられた治療を開始しなかった30例(0.2%)を除いたmodified ITT解析。
◯結果
従来療法群のTTRは61%、アピキサバン群で80%以上のアドヒアランスであったのは96%。
アピキサバン群 vs 従来療法群、相対リスク(95%CI)
primary efficacy endpoint:2.3% vs 2.7%, 0.84(0.60-1.18)
primary safety endpoint:0.6% vs 1.8%, 0.31(0.17-0.55)