虚血性心疾患

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)で残存狭窄に対する一期的なPCIは、その後の心イベントを抑制する PRAMI試験

STEMIでprimaryPCIを行ったあと、残存狭窄があった場合にそれに対しPCIを行うか否か。それにより心血管イベントを減らすというデータはPRAMI試験、CvLPRIT試験、PRIMULTI試験などがある。

PRIMULTI試験では、STEMIの残存狭窄をFFRで評価しPCI(FFR guide PCI)を行なっており、死亡率と心筋梗塞の発症では有意差がなかったが、不安定狭心症によるPCIを有意に減らしprimary endpointで有意差をつけた結果となっている。

参照:急性心筋梗塞(STEMI)の残存狭窄に対するFFR guide PCIは心血管イベントを減らす PRIMULTI試験

PRAMI試験ではprimary PCIが成功した症例を対象としており、梗塞血管以外に残存狭窄を有する症例をprinary PCIに引き続いて一期的に残存病変のPCIを行い、その後の心イベントを観察している。

Randomized Trial of Preventive Angioplasty in Myocardial Infarction
N Engl J Med. 2013 19;369:1115-23

◯この論文のPICOはなにか
P:ST上昇型心筋梗塞(STEMI)で、50%以上の残存狭窄を認める
I:primary PCIに引き続いて一期的に残存病変のPCIを行う(予防的PCI群)
C:primary PCIのみ(非予防的PCI群)
O:心臓死、非致死的心筋梗塞、難治性狭心症の複合エンドポイント

inclusion criteria:STEMI(CLBBBを含む)で梗塞血管へのPCIが成功した症例で、50%以上の残存狭窄を認める。

exclusion criteria:心原性ショック、CABG後、左冠動脈主幹部・左前下行枝や左回旋枝入稿部に50%以上の狭窄を認める、残存病変が慢性閉塞性病変

◯結果
予防的PCI群:234例、非予防的PCI群:231例の計465例がランダム化され、ITT解析されている。平均フォローアップ期間は23ヶ月。両群間で冠危険因子や責任病変部位、残存狭窄を認める血管数などの有意差はない。

primary endpointは予防的PCI群で21例、非予防的PCI群で53例(Hazard ratio:0.35, 95%CI:0.21-0.58)で有意に予防的PCI群で少なかった。

心臓死と非致死的心筋梗塞は、HR:0.36(95%CI:0.18-0.73)
心臓死は、HR0.34(95%CI:0.11-1.08)
非致死的心筋梗塞は、HR32(95%CI:0.13-0.75)

◯批判的吟味/感想
・primaryに続けて残存病変のPCIを行うので、残存病変に対するPCIに関連した心筋梗塞はマスクされる。
・フォローアップ期間を考慮すると、非予防的PCI群で心臓死と非致死的心筋梗塞の発生率が高いように思う(11.7%/23ヶ月)。
・open labelの試験で、ソフトエンドポイント(難治性狭心症)が用いられている。
・非致死的心筋梗塞の診断には従来のWHO診断基準ではなく、universal definitionが用いられている。
・造影剤腎症のリスクが増す(日本人は体が小さく、よりリスクは大きくなる)。