虚血性心疾患

STEMI+多枝病変 完全血行再建は緊急血行再建のみ減少させる

Complete or Culprit-Only Revascularization for Patients With Multivessel Coronary Artery Disease Undergoing Percutaneous Coronary Intervention: A Pairwise and Network Meta-Analysis of Randomized Trials.
JACC Cardiovasc Interv. 2017 Feb 27;10(4):315-324

多枝病変を有するSTEMI患者の予後が悪いことは知られているが、primary PCIを行なった後に残存した狭窄に対しどのような治療戦略(薬物療法のみか、PCIも行うか、PCIを行うならそのタイミングはいつが良いか)が最適かどうかはわかっていない。

◇論文の概要
多枝病変を有するSTEMIを対象としたメタ解析である。

10個のRCT(2285例)を組み入れ、残存狭窄に対する治療を、薬物療法のみと完全血行再建(primary PCTと同時、入院中、退院後)に分けている。


(本文から引用)
責任病変のみと完全血行再建を比較。完全血行再建を行なっても、死亡率や再梗塞率はかわらない。死亡のI2統計量は1.8%と異質性は低く、信頼性が高いデータ。減少するのは、緊急血行再建のみ。いずれの試験もオープンラベルなので、緊急血行再建はバイアスが入る余地がある。

ちなみに、心筋梗塞を減らしているPRAMI試験では、primary PCI時に残存病変の治療も行なっているため、手技に関連した心筋梗塞はマスクされる可能性がある。


(本文から引用)
PCIのタイミングについて、責任病変のみ、primary PCIと同時、入院中、退院後の4つのストラテジーでの比較。死亡率は責任病変のみでも完全血行再建でも変わらない。緊急血行再建は、完全血行再建を行なった群で有意に少ないが、完全血行再建の中では、primary PCIと同時、入院中、退院後のいずれのタイミングでも、差はない。

◇感想
STEMIの残存病変に対する完全血行再建は、緊急血行再建は減らすが、死亡率、再梗塞率は減らさない。治療の性質上オープンラベルなので、血行再建というソフトエンドポイントはバイアスが入る余地がある。

以前publishされているメタ解析(J Am Coll Cardiol 2011;58:692–703)では、責任病変のみ、primary PCIと同時、staged PCIを比較し、staged PCIが短期予後と長期予後を改善させたと報告している。ただ、このメタ解析には観察研究を含んでいて、primary PCIと同時に残存狭窄の治療を行なった群に、Killip Ⅳやショックが多く含まれているので、選択バイアスや無イベント時間バイアスが入っている可能性がある。

STEMIの残存狭窄の治療対象となるのは、安定狭心症と同様、angiographicalではなくFFR guideが良いと、DANAMI3-PRIMULTI試験で決着が付いている。では、PCIのタイミングはというと、このメタ解析が示すように、primary PCIと同時でも、入院中でも、退院後でも、いつでも変わらない。

そして、残存狭窄に対するPCIのベネフィットは、緊急血行再建の減少のみ。死亡率や再梗塞率の減少という恩恵を受けている患者もいるかもしれないが、集団でみた場合にはその有効性は示されていない。