Cholesterol, Cardiovascular Risk, Statins, PCSK9 Inhibitors, and the Future of LDL-C Lowering
JAMA. 2016;316(19):1967-1968.
冠動脈疾患一次予防、特に二次予防において、積極的LDLコレステロール低下療法はここ30年間の公衆衛生に最も寄与したもののひとつである。LDLコレステロールが低いと冠動脈疾患が起こりにくく、遺伝子変異によりLDLコレステロールが高くなると冠動脈疾患のリスクが高くなる。LDLコレステロールは動脈硬化により、濃度依存的に冠動脈疾患のリスクを上昇させる。
LDLコレステロール値は、スタチンと冠動脈疾患との関連ではサロゲートマーカーであるが、他の薬剤と冠動脈疾患との関連ではサロゲートマーカーになりえるかは明らかではない。CETP阻害薬であるトルセトラピブは、LDLコレステロールは減少したが、心血管疾患の発症は抑えられず、またエゼチミブでは、スタチンと併用することでLDLコレステロールは低下したが、臨床的なエネフィットはわずかであった。
PCSK9阻害薬は、耐えうる最大量のスタチンと併用してLDLコレステロールを低下させることにより、心血管疾患を減少させることが期待できるが、安全性・有効性についての長期試験が必要である。
PCSK9阻害薬は、臨床での使用期間や心血管アウトカムのデータが十分でなく、特に認知機能と糖尿病への悪影響は興味深い。今後数年でRCTの結果が報告されるだろう。
2013年のACC/AHAのコレステロールガイドラインでは、ハイリスクの患者に対する高容量スタチンを勧めているが、2016年のACCコンセンサスステートメントでは、二次予防でLDLコレステロール低下率が50%未満の患者、LDLコレステロールの目標値を達成できていない患者など残余リスクがある患者に非スタチン療法(エゼチミブ、PCSK9阻害薬)を勧めている。
しかし、患者は多様である。スタチン単独でLDLコレステロールが十分低下する患者、スタチンで筋肉痛などの有害事象が起こる患者、LDLコレステロールが高くても心筋梗塞にならない患者、LDLコレステロールが低くても心筋梗塞を発症する患者など様々である。RCTと観察研究は、実臨床での多様な患者を一般化したものである。
スタチンのLDLコレステロール低下効果のkなりのエビデンスがあるにもかかわらず、高容量スタチン療法が行われている冠動脈疾患患者は半分以下である。この残余リスクに対しては多角的なアプローチが必要である。
アドヒアランスを改善させるために、ソーシャルメディアやデジタルヘルスを用いる方法がある。デジタルプラットフォームでは、患者がスタチンを自己中断する前に筋肉痛などの症状について相談でき、主治医は別のスタチンや減量などの提案が可能になる。
大規模で多様な集団を対象に遺伝子、淡白、環境、行動などのデータを取ることで、よりリスクが高い患者を同定できるようになるかもしれない。集団データから得られた情報は、個別化医療と心血管疾患を減少させるための治療方針の決定に役立つだろう。