血管疾患

近位深部静脈血栓症に対する弾性ストッキングは24ヶ月続けるのがベター OCTAVIA試験

One versus two years of elastic compression stockings for prevention of post-thrombotic syndrome (OCTAVIA study): randomised controlled trial
BMJ 2016;353:i2691

《要約》
目的
近位深部静脈血栓症を発症後、弾性ストッキングを12ヶ月着用することは24ヶ月着用することに対し非劣性であるか検証する。

デザイン
多施設、盲検化、非劣性、無作為化比較対照試験

セッティング
オランダの大学病院を含む8つの教育研究病院の外来

参加者
エコーで診断がついた症候性の深部静脈血栓症(DVT)を発症後、12ヶ月の弾性ストッキング着用に同意した患者

介入
DVT発症後、弾性ストッキングを12ヶ月で中止するか否か

アウトカム
主要評価項目は血栓後症候群(standardized Villalta scaleで評価)で、事前に定めた非劣性マージンは10%である。副次評価項目はQOL(VEINES−QOL/Sym)である。

結果
DVTの診断から1年が経ち、弾性ストッキングを着用していた血栓後症候群のない患者518例を、弾性ストッキングをもう1年継続するか、あるいは中止するかの2群に無作為化した。弾性ストッキング中止群では、51/256例(19.9%)で血栓後症候群を発症した。弾性ストッキング継続群では85%が弾性ストッキングを週に6−7日着用しており、34/262例(13.0%)で血栓後症候群を発症した。absolute differenceは6.9%(95%CIの上限:12.3%)。95%信頼区間の上限が事前に定めた非劣性マージン10%を超えたため、非劣性は証明できなかった。弾性ストッキングの静脈後血栓症に対するNNTは14(95%CIの下限は8)であった。QOLに群間差はなかった。

結論
近位DVTで1年間弾性ストキングの着用を継続した患者では、弾性ストッキングの着用を1年で中止することは、2年間の着用継続に対し非劣性ではなかった。

◇この論文のPICOはなにか
P:症候性で、エコーにより近位DVTと診断され、発症1年未満の患者
I:12ヶ月で弾性ストッキングの着用を中止する(弾性ストッキング中止群)
C:24ヶ月まで弾性ストッキングを着床する(弾性ストッキング継続群)
O:

inclusion criteria:膝窩静脈より近位のDVT、ガイドラインに準じて抗凝固療法を行っていること、弾性ストッキングclassⅢ(34−46mmHg)を着用していること、週に6日以上弾性ストッキングを着用していること
exclusion criteria:DVTの同側での再発、膝窩静脈より遠位にのみDVTを認めること、試験登録前でDVT発症後1年以内に血栓後症候群を発症している患者、Villalta score5点以上、初回のDVT発症前に弾性ストッキングを使用していること、動脈機能不全やアレルギーなどの弾性ストッキング禁忌、生命予後6ヶ月以内

◇baselineは同等か
characteristics
同等。約60%が外傷・手術・妊娠など一過性の原因。抗凝固療法は、DVT発症後10日ぐらいは低分子ヘパリンで、そのあとワルファリンで6ヶ月ほど。無作為化の際に抗凝固療法を行っていたのは約15%ほど。

◇結果
地域:オランダ
登録期間:2009年2月〜2013年9月
無作為化:online randomisation module provided by the Dutch Julius Centre for Health Sciences and Primary Care in Utrecht,th Netherlands,which ensured concealed allocation.
盲検化:study personnelは盲検化されているということなので、おそらくアウトカム評価者と解析者は盲検化されているはず。
必要症例数:516例(弾性ストッキング継続群で血栓後症候群で2−3%に血栓後症候群を発症、power80%、αlevel0.05、非劣性マージン10%、死亡やDVTの再発があることも加味し算出)
症例数:522例(弾性ストッキング中止群260例、弾性ストッキング継続群262例)
追跡率:489/522例(93.7%)
解析:mITT(弾性ストッキング中止群のうち4例がineligibleということで解析から外されている)
スポンサー:企業の関与あり(sanofi)

弾性ストッキング継続群ではアドヒアランスを把握できたのは218/262例(83.2%)であった。
result

◇感想
外傷、手術、妊娠・出産など一過性の原因については弾性ストッキングを使用しなくてもいいのではないかと思うが、それでも弾性ストッキングを12ヶ月で中止すると血栓後症候群が増えてしまっているので、弾性ストッキングを着用するなら少なくとも24ヶ月は続けておいたほうがよいということだろう。