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心エコーでの左室拡張能評価

左室への血液の流入は、心室の能動的な弛緩と、左房の収縮により起こるため、二峰性になる。左室が収縮が終わり、能動的に弛緩することで僧帽弁が開口し、左室と左房の圧較差が生じているため、一気に血液が流れてくる。左室の能動的な収縮が終わると、左房が収縮し、さらに左室へ血液が流入してくる。

心尖部左室長軸像を描出しパルスドプラのサンプルを僧帽弁の先端に置く。拡張早期左室弛緩によるものがE波、拡張後期心房収縮によるものがA波である。これらの血流速度は、拡張期左房・左室間圧較差により決定される。

正常例では左室は十分弛緩するため、左室圧が大きく下降し、圧較差は大きくなる。そのためEは高くなる(E/A>1)。圧較差が大きいと血液がすばやく左室へ流入するので、圧較差は急激に減少する。なので、僧帽弁流入血流の減速時間は短縮する(DCT<240msec)。

一方、左室の拡張能が低下すると、弛緩が十分起こらないため、左室・左房間圧較差は小さい。左房から左室へゆっくりと血液が流入してくるため、E波は小さくなり、僧帽弁流入血流の減速時間は延長する(DCT>240msec)。加齢によっても拡張能は低下するため、60歳を超えるとE/A<1となる。

心機能が低下してくると左房圧が上昇するため、拡張早期の左室・左房間圧較差は大きくなる。それにより、再びE波は高く(E/A<1)、減速時間は短くなり(DCT<240msec)、正常例と鑑別が困難となる。このような波形を偽正常化という。さらに進行し左房圧が上昇したものが拘束性障害であり、E/A>2、DCT<150msecとなる。

正常例と偽正常例の鑑別には、僧帽弁輪速度(e’)が有用である。心尖部四腔像(A4C)を描出し、心室中隔側の僧房弁輪部に組織ドプラのサンプルを置く。拡張早期最大速度(e’またはEa)と拡張後期最大速度(Aa)の、下向きに二峰性の波形を記録することができる。e’の正常値は8-15cm/sであり、拡張障害の進行によりe’は低下する。

また、E/e’は左房圧を推定する指標ともなり、正常ではE/e'<10となるが、高度に左房圧が上昇すれば、15を超える(肺動脈楔入圧>25mmHg)。