Effect of PCI on Long-Term Survival in Patients with Stable Ischemic Heart Disease.
N Engl J Med. 2015;373:1937-46
背景
PCIは安定虚血性心疾患患者の症状は取り除くが、生命予後の改善は示されていない。1999年6月から2004年1月に、2287例の安定虚血性心疾患患者の初期治療方針として、至適薬物療法のみを行う薬物療法群と薬物療法に加えPCIを行うPCI群に割り付けた。4.6年の観察期間(中央値)で、生存率に統計学的有意差はなかった。15年間フォローしたこれらの患者の生存率を報告する。
方法
COURAGE試験の観察期間終了後も、退役軍人病院といくつかのその他の施設のデータから、対象患者の生存や死因に関するデータを集めた。カルランマイヤー法やCox比例ハザードモデルを用いて群間差を調整し、生存率を計算した。
結果
1211例(全症例の53%)の生存情報を入手した。フォローアップ期間の中央値は6.2年で、
561例の死亡があり(試験期間中に180例、その後に381例)、PCI群で284例(25%)、薬物療法群で277例(24%)であった。調整後ハザード比1.03、95%CI:0.83−1.21
結論
安定した虚血性心疾患患者の15年のフォローアップ期間で、PCI併用するか、あるいは薬物療法のみを行うかという初期治療戦略によって、生存率に差異は生じなかった。
◯この論文のPICOはなにか
P:慢性の安定狭心症、もしくは無症候性心筋虚血
I:初期治療として、PCIを行う(FFR群)
C:初期治療として、薬物療法を行う(薬物療法群)
O:長期フォローアップでの死亡率
inclusion criteria:負荷試験あるいは安静時心電図での新規の虚血性ST変化、冠動脈造影により確認された70%以上の狭窄。
◯結果
観察期間はCOURAGE試験のオリジナルの観察期間は4.6年で、そのうち長期のフォローができたものの平均観察期間は11.9年であった。全患者では6.2年である。
オリジナルの観察期間中に、PCI群で46/1149例で割り付け通りPCIが行われておらず、またPCI群で228例、薬物療法群で348例、血行再建が行われている。
OURAGE試験で登録された2287例のうち、データを収集することに同意を得た1211例(53%)について解析されている。
◯感想/批判的吟味
・長期間フォローアップができたのは、COURAGE試験全体の半数なので、ランダム化は維持されていない。
・死亡のみの比較で、その死因については不明である。
・オリジナルの観察期間の終了後に、PCIを行ったかどうかはわからない。
はたしてこの論文からなにがわかったのだろうか。狭心症の初期治療として、PCIを行う方がよいのか、まずは薬物療法のみで十分なのか、この論文をその判断材料にすることはできない。