Warfarin, aspirin, or both after myocardial infarction.
N Engl J Med. 2002 Sep 26;347(13):969-74.
背景
心筋梗塞二次予防のための抗血栓療法の役割は確立されている。文献によるとワーファリンがアスピリンおり優れていることが示唆されるが、アスピリンがより広く使用されている。我々はワーファリン、アスピリン、その併用の有効性・安全性について調べた。
方法
多施設試験で、ワーファリン群1216例(目標PT−INR2.8−4.2)、アスピリン群1206例(160mg/日)、併用療法群1208例(アスピリン75mg/日、目標PT−INR2.0−2.5)の計3630例を無作為化した。平均観察期間は4年間であった。
結果
主要評価項目は、死亡、非致死的心筋梗塞、血栓塞栓性脳梗塞とし、アスピリン群241例/1206例(20.0%)、ワーファリン群203例/1216例(16.7%、アスピリンの比較したときの率比0.69 P=0.03)、併用療法群181例/1208例(15.0%、アスピリンと比較したときの率比0.71 P=0.001)であった。ワーファリン群と併用療法群で有意な差はなかった。大出血・非致死的出血はワーファリンを使用した2群で0.62%/人年、アスピリン群で0.17%/人年であった(P<0.001)。
結論
ワーファリン単独、あるいはワーファリンとアスピリンの併用療法は、アスピリン単独投与に比し心筋梗塞後の複合イベントを減少させるが、出血リスクは増す。
◯この論文のPICOはなにか
P:急性心筋梗塞のため入院した患者
I/C:ワーファリン単独投与(ワーファリン群)、アスピリン単独投与(アスピリン群)、ワーファリンとアスピリンの併用(併用療法群)の3群に割り付け
O:死亡、非致死的心筋梗塞、血栓塞栓性脳梗塞の複合エンドポイント
inclusion criteria:75歳未満
exclusion criteria:アスピリン・ワーファリンに対する禁忌、悪性腫瘍、コンプライアンス不良
◯ランダム化されているか
中央割り付け方式によるランダム化が行なわれている。
◯症例数は十分か
併用療法群に対する相対リスクは、ワーファリン群で1.27、アスピリン群で1.54、2年間のイベント率17%と仮定。すべての患者を少なくとも2年間フォローアップし、イベント率が17%を超えた時点で試験を中止する。αlevel0.05、power80%として、必要症例数は各群1202例の計3606例と算出されており、各群でそれを満たしている(ワーファリン群1216例、アスピリン群1206例、併用療法群1208例)。
◯盲検化されているか
open-label。outcome評価者は盲検化されている。
◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。
内服の中断は、ワーファリン群387例、アスピリン群191例、併用療法群480例であった。
非致死的大出血はアスピリン群0.17%/年、ワーファリン群0.68%/年、併用療法群0.57%/年で、アスピリンとワーファリンの比較では有意差があった(率比0.25、95%CI0.10−0.60)。
(表はすべて本文から引用)
◯感想/批判的吟味
ワーファリンは、アスピリンと比べ心筋梗塞の再発を30−40%押さえるが、重大な出血は4倍に増やす。ただ、死亡率は変わらない。死亡率が変わらないのは、ワーファリン中断例がアスピリン群に比べ多いからかもしれない。