集中治療

中等症〜重症ARDSに対する肺リクルートメントは死亡率を増加させる可能性がある

Effect of Lung Recruitment and Titrated Positive End-Expiratory Pressure (PEEP) vs Low PEEP on Mortality in Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2017;318(14):1335-1345

◇リサーチクエスチョン
肺リクルートメント+PEEP調整は、中等症〜重症ARDSの予後を改善するか。

◇PICO
P:発症72時間以内の中等症〜重症ARDS
I:肺リクルートメント+PEEP調整
C:低PEEP
O:28日死亡率

<肺リクルートメント+PEEP調整>
まず、筋弛緩薬を投与し、肺リクルートメントを行う。PEEPを25cmH2Oから開始し、25cmH2Oを1分間、35cmH2Oに上げて1分、さらに45cmH2Oに上げて2分維持する。肺リクルートメントが終わったら、PEEPを23cmH2Oまで下げ、そこから1分ごとに4cmH2Oずつ、コンプライアンスを測定しながら11cmH2Oまで下げる。最良のコンプライアンスとなるPEEP+2cmH2OをPEEPとして設定する。
換気はVCVで、PaO2/FiO2比が安定していれば、8時間ごとにPEEPを2cmH2Oずつ下げていく。

556例登録されたところで、プロトコールが変更。肺リクルートメント群でリクルートメントが原因と思われる心停止が3例あったため。PEEPを25→30→35cmH2Oをそれぞれ1分とし、プラトー圧は50cmH2Oを超えないようにした。

◇試験の概要
デザイン:RCT(多施設、オープンラベル)
地域:ブラジル、イタリア、マレーシアなど9ヶ国
登録期間:2011年11月17日〜2017年4月25日
観察期間:6ヶ月までフォロー
症例数:1010例(肺リクルートメント群501例、低PEEP群509例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果

◇まとめと感想
中等症〜重症ARDSに対し、肺リクルートメントを行いPEEPを高く保つことは、死亡率を増加させた。

ただ、これを根拠に肺リクルートメント+PEEP調整が有害とは言えない。というのも、最初のプロトコールはどうもPEEPが高すぎ、かつ長すぎた様で、それが原因と思われる心停止が3例起きているから。やるんだったら、もう少し低く短くした方がよさそう。

自分の場合は、循環器疾患を診ているので、せいぜいPEEP30・10秒程度、あるいはPEEP20−25でもうちょっと長めに、血圧見ながらって感じです。