不整脈

ENSURE−AF試験 電気的除細動時の抗凝固療法はエドキサバンでもよい

Edoxaban versus enoxaparin–warfarin in patients undergoing cardioversion of atrial fibrillation (ENSURE-AF): a randomised, open-label, phase 3b trial
Lancet. 2016 Aug 26. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
経口第Ⅹa因子阻害薬であるエドキサバンは、心房細動患者の脳梗塞と全身性塞栓症の予防において、良好にコントロールされたエノキサパリンーワルファリン療法に対し非劣性で、出血は少ない。また、電気的除細動施行時のエドキサバンの有効性に関するデータは少ない。

方法
多施設、前向き、無作為化、オープンラベル、エンドポイントの盲検化を行なった試験で、19カ国、239施設が参加した。電気的除細動を施行する非弁膜症性心房細動患者において、エドキサバン60mgとエノキサパリンーワルファリンを比較した。減量基準(CCr15−50ml/min、体重≦60kg、P糖蛋白阻害薬の使用)を1つ以上満たす場合には、エドキサバンは30mgに減量した。経食道心エコー(TEE)の有無、抗凝固療法の治療歴、エドキサバンの投与量、地域で層別化し、voice-web systemでプロック無作為化を行った。有効性主要評価項目は脳梗塞、全身性塞栓症、心筋梗塞、心血管死亡率の複合エンドポイントで、ITT解析を行った。安全性主要評価項目は大出血と臨床的に意義のある非大出血である。フォローアップは電気的除細動後28日間で、安全性の評価にはさらに30日間観察した。

結果
2014年3月14日から2015年10月28日までに2199例が登録され、エドキサバン(1095例)とエノキサパリンーワルファリン(1104例)の投与を受けた。平均年齢は64歳(SD10.54)、CHA2DS2−VAScスコアの平均値は2.6(SD1.4)、ワルファリンのTTRは70.8%(SD27.4)であった。有効性主要評価項目は、エドキサバン群で5例(<1%)、ワルファリン群で11例(1%)であった(OR:0.46、95%CI:0.12−1.43)。安全性主要評価項目はエドキサバン群16/1067例(1%)、ワルファリン群11/1082例であった(OR:1.48、95%CI:0.64−3.55)。結果はTEEと抗凝固療法の治療歴に依存した。

結論
ENSURE-AF試験は、非弁膜症性心房細動患者の電気的除細動施行時の抗凝固療法として、最も大きい前向き無作為化試験である。大出血、臨床的に意義のある非大出血、血栓塞栓症の発現率は両群で低値であった。

◯この論文のPICOはなにか
P:非弁膜症性心房細動で電気的除細動を行う患者
I:エドキサバンの内服
C:エノキサパリン及びワルファリンの内服
O:有効性主要評価項目は脳梗塞、全身性塞栓症、心筋梗塞、心血管死亡率の複合エンドポイント。安全性主要評価項目は大出血と臨床的に意義のある非大出血。

inclusion criteria:非弁膜症性心房細動、電気的除細動と抗凝固療法が予定されている患者、抗凝固療法あるいは抗血小板療法が以前もしくは現在行われている患者
exclusion criteria:本文には記載なし

手順:まず、TEEを行う患者群について。ワルファリン群は、無作為化の時点でPT−INRが2.0を超えていればエノキサパリンは使用せず、ワルファリンを継続する。PT−INRが2.0を超えていなければエノキサパリンとワルファリンの投与を開始し、PT−INRが2.0を超えた時点でエノキサパリンを中止する。PT−INRは2.0−3.0を目標とし、ワルファリンはカルディオバージョン後28日間継続する。エドキサバン群は、少なくとも電気的除細動の2時間前までに内服を開始し、電気的除細動後28日間継続する。
次に、TEEを行わない患者群について。TEEを行う患者群とほとんど変わらないが、電気的除細動前の抗凝固療法は少なくとも21日間は行う。

◯baselineは同等か
characteristics
群間差についての記載がないが、一見差はなさそう。平均年齢64歳と若めで、CHA2Ds2−VAScスコア2.6±1.4と中等度ぐらいの塞栓リスク。

◯結果
地域:欧州・米国の19カ国、239施設
登録期間:2014年3月25日〜2015年10月28日
観察期間:電気的除細動後28日間+内服中止後30日間
無作為化:TEEの有無、抗凝固療薬の使用歴、エドキサバンの用量、地域による層別化を行い、voice-web systemを用いてブロック無作為化を行う。
盲検化:患者、治療介入者、解析者は盲検化されていない(オープンラベル)。outcome評価者のみ盲検化。
必要症例数:2200例(ワルファリン群の脳梗塞及び全身性塞栓症が0.6%、power80%として0.2%の差異を検出するためには40000例が必要。実際には、点推定を用いるためサンプルサイズは2200例としている)
症例数:2199例(エドキサバン群1095例、ワルファリン群1104例)
追跡率:エドキサバン群1001/1095例(91.4%)、ワルファリン群969/1104例(87.8%)
解析:ITT解析
スポンサー:第一三共

result
エドキサバンのコンプライアンスは99%以上で、ワルファリン群のTTRは70.8%と概ね良い。

◯感想/批判的吟味
電気的除細動を行う心房細動患者の抗凝固療法は、エドキサバンでもワルファリンでも差がないという結果。これだけイベント率が低いので2200例ではパワー不足であり、これでエドキサバンとワルファリンの効果は同等としてよいのかわからない。ただ、NOACの今までのRCTのpost hoc解析や、リバーロキサバンのX−VeRT試験と同じ傾向であるし、感覚的にも別にNOACでいいよなぁという感じ。