弁膜症

50−69歳の大動脈弁置換術(AVR)は、生体弁より機械弁の方が長期予後が良い

Aortic valve replacement with mechanical vs. biological prostheses in patients aged 50-69 years.
Eur Heart J. 2015 Nov 11.[Epub ahead of print]

《要約》
目的
生体弁もしくは機械弁を用いて大動脈弁置換術(AVR)が施行された50−69歳の患者の長期的な全死亡を評価する。

方法・結果
スウェーデンのレジストリデータから、1997年から2013年にAVRが行われた50−69歳の患者を抽出した。4545例のうち、60%(2713/4545例)で機械弁が、40%(1832/4545例)で生体弁が使用されている。プロペンシティスコアがマッチした1099ペアにおいて、平均観察期間6.6年で死亡は機械弁では16%(180/1099例)、生体弁では20%(217/1099例)であった。生存率は生体弁より機械弁で高かった。5年、10年、15年での生存率は、機械弁では92%、79%、59%で、生体弁では89%、75%、50%であった(HR:1.04、95%CI:1.09−1.66)。脳梗塞には有意差はなかった(subdistribution HR:1.04, 95%CI:0.72-1.50
)。しかし、生体弁では、大動脈弁再手術が有意に高く(sHR:2.36, 95%CI:1.42-3.94)、大出血は低かった(sHR:0.49, 95%CI:0.34-0.70)。

結論
機械弁による大動脈弁置換術を受けた50−69歳の患者は長期生存率が、生体弁を使用された患者より高かった。脳梗塞のリスクは同程度であったが、生体弁が使用された患者では、大動脈弁再手術が多く、大出血は少なかった。

◯論文のPICOはなにか
P:50−69歳のAVRが施行された患者
I/C:生体弁/機械弁
O:全死亡

◯結果
・期間:1997年1月1日〜2013年12月31日
・フォローアップ期間:平均7.3年
・交絡因子の調整にはプロペンシティスコアが用いられている
・生体弁は1997−2002年までは17%だったが、2006−2013年には58%である

result

・機械弁vs生体弁(sHR、95%CI)、プロペンシティスコアによる
脳梗塞:5.8% vs 6.1%(1.04, 0.72-1.50)
再手術:2.2% vs 5.2%(2.36, 1.42-3.94)
大出血:9.6% vs 4.9%(0.49, 0.34-0.70)
心血管死:5.2% vs 5.1%(1.00, 0.67-1.50)

◯感想/批判的吟味
・後向きコホート研究
・AHAガイドラインでは60以下は機械弁、70歳以上は生体弁で、60−70歳はいずれの弁も考慮可となっているが、その年齢層においても機械弁が望ましいかもしれない。
・生体弁では再手術が多いが、脳梗塞や心血管死は同等であり、後向き研究であるため生体弁で長期予後が良くない理由まではわからない。