血管疾患

IVCフィルターは肺塞栓症を抑制するが、生命予後は改善せずDVTを増やす

Inferior Vena Cava Filters to Prevent Pulmonary EmbolismSystematic Review and Meta-Analysis
J Am Coll Cardiol. 2017;70(13):1587-1597

◇論文のPICOはなにか
P:PEの一次予防、または二次予防
I:IVCフィルターあり
C:IVCフィルターなし
O:肺塞栓症(PE)の発症率

<文献データベース>
MEDLINE、CENTRAL、ClinicalTrials.gov

<研究の選択>
・組み入れた研究:RCT、IVCの有無で比較した前向き観察研究
・期間:〜2016年10月3日
・ Inverse variance fixed-effects models

◇結果
▶︎PE

(本文から引用)

IVCフィルターの使用は、PEの発症低下と関連あり(オッズ比:0.50、95%CI:0.33-0.75、I2統計量=48%)

論文中にfunnel plotはないが、本文に”funnel plotで出版バイアスが示唆された”と記載あり。

RCTのみの解析でも、同様にIVCフィルターとPE発症率低下の関連あり(オッズ比:0.40、95%CI:0.23-0.69、I2=37%)。

▶︎PE関連死

(本文から引用)

観察研究では、出版バイアスのためかPE関連死は減少しているが、RCTでは有意差はない。

▶︎全死亡

(本文から引用)

全死亡では差がない。

▶︎DVT

(本文から引用)

DVTは増える。

◇まとめと感想
IVCフィルターの有効性を検証したRCTは多くない。その中でもっともサンプルサイズが大きいRCTがPREPIC1試験とPREPIC2試験である。このSRでは、PREPIC 1998、Mismetti 2015というのがそれである。

PREPIC1試験は、近位部DVTを抗凝固療法単独と抗凝固療法+IVCフィルターに割り付けたRCT。12日以内のPEは、IVCフィルターありで1.1%、なしで4.8%と有意に減少したが、2年のフォローアップで有意差はなくなり(3.4%vs6.3%)、DVTは有意に増え(20.8%vs11.6%)、全死亡に差はなかった(21.6%vs20.1%)。

じゃぁ、PEの発症早期だけIVCフィルターを入れておけば、PE再発を予防できDVTも増やさないのではないかという仮説が立つし、理になかっているように思われる。それに応えたのがPREPIC2試験。再発リスクの高いPEを対象に、抗凝固療法単独と抗凝固療法+回収可能型IVCフィルターに割り付け、回収可能型フィルターは3ヶ月後に抜去するというデザイン。抜去成功率は93.2%。

結果は、3ヶ月後のPEはIVCフィルターありで3.0%、なしで1.5%と、PE発症早期のみのIVCフィルター留置でもPEの再発を抑制できなかった。

ただ、IVCフィルターを回収していないPREPIC1試験の8年間のフォローアップでは、PEの再発が6.2%vs15.1%と再び有意差が付いている。多変量解析では、悪性腫瘍とIVCフィルター留置時のPEが予後因子だったので、それらの患者にはIVCフィルターの留置を考慮してもいいのかもしれない(ただし、生命予後には関係がなく、DVTは増える)。

SRでは、PREPIC1試験とPREPIC2試験のサンプルサイズ、イベント数が多く、その2つが大きなウエイトを占める。なので、それ以上の結果はでないのだが、結果としては、PEの一次予防と二次予防をまぜた集団で、IVCフィルターはPEの発症を減少させるが、PE関連死や全死亡は減らなかった。