High-flow oxygen through nasal cannula in acute hypoxemic respiratory failure.
N Engl J Med. 2015 Jun 4;372(23):2185-96
背景
急性低酸素血症性呼吸不全に対し非侵襲的人工呼吸を行うすべきどうかは議論がある。鼻カヌラを使用した高流量酸素療法は低酸素血症の患者において、選択肢になるかもしれない。
方法
高二酸化炭素血症のない急性低酸素血症性呼吸不全で、P/F比が300未満の患者を対象に、多施設、オープンラベル、無作為化試験を行った。対象を、高流量酸素療法(ネーザルハイフロー)、フェイスマスクを使用した標準的酸素療法、非侵襲的陽圧換気(NPPV)に割り付けた。主要評価項目は28日以内の気管内挿管した患者の割合であり、副次評価項目は90日以内の全死亡、28日間のうちの人工呼吸器非装着日数である。
結果
310例を解析に含めた。主要評価項目である挿管率は、ネーザルハイフロー群で38%(40/106例)、フェイスマスク群で47%(44/94例)、NPPV群で50%(55/110例)であった(P=0.18)。人工呼吸器非装着日数は、ネーザルハイフロー群で有意に高く、それぞれ24±8日、22±10日、19±12日であった(P=0.02)。90日以内の死亡のネーザルハイフローに対するハザード比は、フェイスマスク群で2.01(95%CI:1.01−3.99)、NPPV群が2.50(95%CI:1.31-4.78)であった。
結論
高二酸化炭素血症のない急性低酸素血症性呼吸不全の患者において、ネーザルハイフローやフェイスマスクやNPPVでの治療で挿管率に違いはなかった。90日死亡率はネーザルハイフローで有意に低かった。
◯この論文のPICOはなにか
P:高二酸化炭素血症のない急性低酸素血症性呼吸不全
I/C:ネーザルハイフロー、フェイスマスクによる酸素投与、NPPV
O:28日以内の気管内挿管した患者の割合(挿管率)
inclusion criteria:18歳以上、以下の4つを満たすこと(呼吸数25回/分、P/F比300未満、PaCO2が45mmHg以下、慢性呼吸不全がないこと)。FiO2は別の機器を用いて計測する。
exclusion criteria:PaCO2が46mmHg以上、気管支喘息や慢性呼吸不全の増悪、肺水腫、重篤な好中球減少症、血行動態不安定、血管収縮薬の使用、GCS12以下、非侵襲的人工呼吸に対する禁忌、気管内挿管を要する症例、気管内挿管を希望しない症例
◯ランダム化されているか
webによる中央割り付け方式
◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢60歳、男性70%、市中肺炎60%、院内肺炎10%、肺外敗血症5%、呼吸数33回/分、心拍数105回/分、収縮期血圧130mmHg、PaO2 90mmHg, P/F比150
◯症例数は十分か
フェイスマスク群の挿管率を60%、ネーザルハイフロー群とNPPV群の絶対リスク低下を20%と仮定し、power80%、αlevel0.05で必要症例数を300例と算出している。ネーザルハイフロー群106例、フェイスマスク群96例、NPPV群111例の313例がランダム化されている。
◯盲検化されているか
試験の性質上、患者と治療介入者は盲検化できないが、outcome評価者、解析者は盲検化されている。
◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
同意の撤回をした3例(フェイスマスク群:2例、NPPV群:1例)を除いた310例を解析しており、modefied ITT解析である。
◯感想/批判的吟味
・outocome評価者や解析者を盲検化しているとはいえ、オープンラベルであり、またエンドポイントは挿管なのでソフトなエンドポイント。バイアスは十分入りうる。
・対象患者のメインは肺炎。肺水腫は除外されており、心不全は対象になっていない。やはり、NPPVは肺炎に対してはよくない(特に有意差があるというわけではないが)。
・肺炎に対する挿管を回避するという意味では、ネーザルハイフローは有効かもしれない。
・死亡率を低下させているが、これはsecondary endpointであり、別途検証が必要。