虚血性心疾患

IVUS−XPL試験 IVUSガイドPCIは、標的病変再血行再建を減らす 

Effect of Intravascular Ultrasound-Guided vs Angiography-Guided Everolimus-Eluting Stent Implantation: The IVUS-XPL Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2015 Nov 10 [Epub ahead of print]

《要約》
背景
IVUSの使用は、複雑な冠動脈病変へのPCIにより良い臨床転帰をもたらす。しかし、ランダム化試験のデータは薬剤溶出性ステントで治療を行った病変に限定される。薬剤溶出性ステント(DES)を用いてlong lesionのPCIを行うとき、IVUSガイドPCIが造影ガイドPCIより優れた成績であるか検証した。

方法
long lesionの治療において、DESを用いたIVUSガイドPCIが造影ガイドPCIより優れた臨床転帰をもたらすか検証した。28mmのDESを使用した1400例が対象で、IVUSガイドPCIを行う群と造影ガイドPCIを行う群の2群に割り付けた。主要評価項目は1年間の心臓死、標的病変心筋梗塞、虚血による標的再病変血行再建で、ITT解析を行う。

結果
1323例(94.5%)で1年間のフォローアップを行った。IVUSガイド群で19例(2.9%)、造影ガイド群で39例(5.8%)に心イベントが起こった(絶対差異:−2.97%、95%CI:-5.14−-0.79)。その差異は、IVUSガイド群で虚血による標的病変再血行再建が少なかったためである(IVUSガイド群:2.5%、造影ガイド群:5.0%、HR0.51、95%CI0.28−0.91)。心臓死と標的血管心筋梗塞に有意な差はなかった。心臓死はIVUSガイド群3例(0.4%)、造影ガイド群5例(0.7%)であった(HR0.6、95%CI:0.14−2.52)。標的血管心筋梗塞はIVUSガイド群ではみられず、造影ガイド群では1例(0.1%)であった(P=0.32)。

結論
長いステントの留置が必要な患者において、薬剤溶出性ステントを用いてIVUSガイド下でPCIを行うことは、それを使用せずにPCIを行う場合に比べ、1年間の重大な心イベントを減らすことができる。それは、主に標的病変再結構再建を減らすためである。

◯この論文のPICOはなにか
P:典型的な胸痛もしくは心筋虚血が証明され、造影上28mm以上のステントの留置が必要なもの
I:IVUSを用いてPCIを施行する(IVUSガイド群)
C:造影所見のみでIVUSは施行せずPCIを施行する(造影ガイド群)
O:1年間の心臓死、標的病変心筋梗塞、虚血による標的再病変血行再建の複合エンドポイント

手順:冠動脈造影を施行後に、症例の登録を行い、IVUSガイド群と造影ガイド群に1:1に割り付けを行う。PCIはDES(Xience Prime)を用いた。造影ガイド群では、造影所見やバルーンなどを参考にステント径・ステント長を決定する。IVUSガイド群では、高圧拡張やステントはIVUS所見を参考に行われる。ステント留置後はアスピリン100mg/日とクロピドグレル75mg/日の内服を6ヶ月以上継続する。

定義
PCI関連心筋梗塞:48時間以内にCK−MBが正常上限の10倍以上に上昇すること、CLBBBや異常Q波を伴った5倍以上の上昇すること。
虚血による標的病変再血行再建:症状や負荷試験が陽性で造影上50%以上の狭窄に対して行うPCI、症状や負荷試験なしに造影上70%以上の狭窄に対して行うPCI

◯ランダム化されているか
web−based response systemを用いてランダム化を行う。

◯baselineは同等か
造影ガイド群でprimary endpointが7%起こり、IVUSガイドPCIによるリスク低下が50%あり、また5−19%のドロップアウトがあると仮定。αlevel0.05、power80%とし、必要症例数は各群700例と算出されている。

◯盲検化されているか
試験の性質上、患者と治療介入者は盲検化されていない。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
すべての症例を解析に含めるITT解析。

◯結果
割り付け通りの治療がなされなかったのが、IVUSガイド群で2例、造影ガイド群で1例あった。また、フォローアップを完遂できなかった症例は、IVUSガイド群で40例、造影ガイド群で37例で、追跡率は約94%であった。

result
(本文から引用)

◯感想/批判的吟味
あまり感想はない。やはりIVUSをみてPCIをやらないと、死亡や心筋梗塞の発生率に差はないけど、再血行再建が増えるわけだし、それで一番不利益を被るのは患者さんであるということ。ただ、日本のPCIのほとんどはIVUSガイドで行われており、うちでのそうなので、別にプラクティスが変わるわけではない。