虚血性心疾患

【EDITORIAL】EXCEL試験 

Treatment of Left Main Coronary Artery Disease
N Engl J Med. 2016 Oct 31. [Epub ahead of print]

1960年代前半に冠動脈造影検査が行われるようになり、左冠動脈主幹部(LMT)の閉塞の危険性が明らかになった。LMT病変を有する患者では、5年生存率は約40%で、生存者は大抵、狭心症や心不全などの重篤な症状があった。

数年後、冠動脈バイパス術(CABG)が行われるようになった。薬物療法よりすぐれていることをが明らかになった。それ以降、LMT病変を有する患者では、禁忌がない限り、CABGが行われるようになった。

1979年、アンドレアス・グルンツィッヒがCABG不適である症例に、経皮的冠動脈形成術を行った。ただ、その危険性は高く、20年の間、非保護LMT病変はほとんどCABGで治療された。ベアメタルステントが使われ始め、数人の勇敢なインターベンショニストが、CABG不適の症例でカテーテル治療を行ったが、その結果はまちまちであった。

手技によって引き起こされた閉塞や再狭窄は重大な問題であった。これらの問題は、テクニックの向上と薬剤溶出性ステント(DES)の開発によってかなり克服され、PCIとCABGは比較されてきた。

PCIとCABGの2つのストラテジーは、死亡、心筋梗塞、脳梗塞、虚血による再血行再建の複合エンドポイントで、同等の結果であった。脳梗塞はCABGでより多く、再血行再建はPCI群で多かった。現在では、LMT病変の治療はCABGよりPCIで行われることが多くなったが、その正当性は明らかでない。

その流れの中で、the Evaluation of Xience versus Coronary Artery Bypass Surgery for Effectiveness of Left Main Revascularization trial(XCEL試験)の結果がpublishされた。EXCEL試験は大規模、多国籍、多施設試験で、1905例の非保護LMT病変が割り付けられた。

2つのストラテジーの目的は、完全血行再建を行うことである。EXCEL試験では、IVUS使用下でXience(エベロリムス溶出性ステント)を留置した。CABGは動脈グラフトを用い、多くの症例でoff-pump CABGが行われた。

EXCEL試験はよくデザインされ、厳密に行われた試験である。両群で術後30日の死亡率は1%であった。複合エンドポイント(3年間の死亡、脳梗塞、心筋梗塞)の発生は、PCIもCABGも同等であった。しかし、全死亡はPCI群で多く、これは非心血管死の増加によるものであった。脳梗塞はCABGで多く、虚血による再血行再建はPCI群で多かった。

EXCEL試験のtake-home massageは、非保護LMT病変は熟練したハートチームによって治療されるなら、PCIとCABGのいずれのストラテジーでも治療可能であるということである。

3年間の全死亡、脳梗塞、心筋梗塞の複合エンドポイントは両群で差はなかったが、30日から3年の間のこれらの複合エンドポイントは、PCI群11.5%、CABG群7.9%と有意にPCI群で有意に多かった(P=0.02)。よって、さらなるフォローアップが必要である。