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On-Pump vs Off-Pump CABG グラフト開存率の比較

A randomized comparison of off-pump and on-pump multivesselcoronary-artery bypass surgery
N Engl J Med 2004; 350:21-28

〇この論文のPICOはなにか
P:初回の冠動脈バイパス術を受ける患者で3グラフト以上のバイパスが必要な者
I:Off-Pump CABG
C:On-Pump CABG
O:3か月後のグラフト開存率(冠動脈造影での評価)

Exclusion criteria:30歳以下、80歳以上、ほかの外科的治療が必要な症例、6ヶ月以内の脳梗塞、70%以上の頸動脈狭窄、3カ月以内の心筋梗塞、LVEF<20%、妊婦と授乳婦 〇ランダム化されているか 手術を行う外科医がランダム化を行っており、隠匿化はされていない。ランダム化の方法も記載されていない。厳密なランダム化試験とはいえない。 〇baselineは同等か 年齢は60歳そこそこで、半分ぐらいが男性。LVEF>50%が7割いて、糖尿病は15%ほど。LAD・LCx・RCAへのグラフトの割合やグラフトの種類も同程度。ただ、native vessel qualityがpoor/fair/goodの3つに分類されており、どのように分けられているかは記載がない。割付の隠匿化がされていないし、主観的な分類なのでバイアスがかかる可能性は十分にある。

〇症例数は十分か
On-PumpとOff-Pumpの最小内径の差は0.3mmで、標準偏差0.5mm(これがどういう意味かはわからない)とし、power0.80、αlevel0.05で必要症例数は100例と算出されており、104例(Off-Pump群54例、On-Pump群50例)登録されている。

〇盲検化されているか
治療介入者は盲検化できない。Outcome評価者(造影所見の評価)は盲検化されている。解析者については記載なし。

〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ランダマイズされた104例のうち、登録後に1例で肺癌が見つかり、解析には含められていない。広義のITT解析(FAS)である。

〇結果の評価
グラフト開存率は全体では、On-Pump群で98%、Off-Pump群で88%で有意にOff-Pump群で開存度が悪い結果であった。一番吻合しやすいであろうLADでもOff-Pump群では92%となってしまっている(On-Pump群では100%)。ただ、discussionで書かれているがこの試験は他の試験と比較してもOff-Pumpでの開存度は低い様。だから通常であれば、というか日本ではOff-Pump CABGが欧米に比べて高い割合で行われているので、もっといいのではないかと思う。

単施設での研究で、この施設ではこの試験を開始する2年前からOff-Pump CABGが行われており、その期間で98/753グラフト(13%)がOff-Pump CABGで行われている。もっと慣れている日本の心臓外科医だと結果は変わってくるのかもしれない。

あと、グラフトの最小内径なども比較されていたが差はついておらず、それが長期の開存度とどう関連するのかはわからない。

単施設での研究であることやランダム化が厳密でないことなどがlimitationである。