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血管緊張性(トーヌス)調節因子と肺高血圧治療薬

血管拡張作用を持つ因子としては、NO(一酸化窒素)、PGI2(プロスタサイクリン)などがある。

NO:血管内皮細胞から放出され、血管平滑筋のGC(グアニル酸シクラーゼ)活性を高める。それによりcGMPが増加し、最終的にはCaの細胞内への流入が抑制され、血管平滑筋が弛緩する。GCはGTPからcGMPを合成する酵素。

PGI2:血管内皮細胞から放出され、血管平滑筋のアデニル酸シクラーゼの活性を高める。それによりcAMPが増加し、血管平滑筋が弛緩する。PGI2のその他の作用として、抗血小板作用や平滑筋増殖抑制作用がある。

また、血管収縮作用を持つ因子としては、ET(エンドセリン)、TXA2(トロンボキサンA2)、ATⅡ(アンギオテンシンⅡ)などがある。ETにはET-1、ET-2、ET-3とあるが、血管系に作用するのはET-1である。

ET-1:受容体には、ETA受容体・ETB1受容体・ETB2受容体があり、ETA受容体とETB1受容体は血管平滑筋に発現しており血管収縮に働く。ETB2受容体は血管内皮細胞に発現しており、NOやPGI2産生を増大させ、血管拡張に働く。

肺高血圧症の治療薬はそれぞれの経路をターゲットとし、3系統の薬剤がある。
PGI2誘導体:ベラプロスト(ケアロード®)、エポプロステノール(フローラン®)
ET受容体拮抗薬:ボセンタン(トラクリア®)、アンブリセンタン(ヴォリブリス®)
PDE(ホスホジエステラーゼ)5阻害薬:シルデナフィル(レバチオ®)、タダラフィル(アドシルカ®)
sGC刺激薬:リオシグアト(アデムパス®)

PGI2誘導体はその名の通りPGI2による血管拡張作用を有する。ET受容体拮抗薬は、ET受容体を阻害することで、ET-1の血管収縮作用を抑制する。アンブリセンタンはETA受容体への選択性が高い。NO系の薬剤としては、PDE5阻害薬とsGC刺激薬があり、PDE5阻害薬はcGMPからGMPへ代謝するPDE5を阻害し、cGMP濃度を上昇させることで、血管拡張作用を現す。sGC刺激薬はリオシグアトのみで、2014年12月時点では慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療薬として薬価収載されており、NOを介さず直接sCGを刺激する薬剤である。

参考:新たな肺高血圧治療薬としてのriociguat(循環器専門医第22巻第2号P177)
エンドセリンの産生調節と病態への関与(TAKUGAKU ZASSHI 2007;127:1319)