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クロストリディウム・ディフィシル感染症の再発 冷凍vs新鮮糞便移植

Frozen vs Fresh Fecal Microbiota Transplantation and Clinical Resolution of Diarrhea in Patients With Recurrent Clostridium difficile Infection: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2016 Jan 12;315(2):142-9.

《要約》
重要性
クロストリディウム・ディフィシル感染症(CDI)は医療や社会環境で大きな負担である。CDIの再発は、治療法が限られており、臨床や感染コントロールの問題と関連するため、特に重要な問題である。糞便移植は有望であるが、すぐに入手可能ではない。

目標
再発性CDIや難治性CDIの患者において、冷凍糞便移植が新鮮糞便移植と比較し非劣性であるか、またいずれの方法も安全かどうかを検証すること。

デザイン、セッティング、参加者
2012年7月から2014年9月にカナダの6つの大学病院で、成人の再発性CDIと難治性CDI232例を対象に、無作為化二重盲検非劣性試験を行った。

介入
無作為に、冷凍糞便移植群(114例)と新鮮糞便移植群(118例)に割り付けた。

主要評価項目と測定
主要評価項目は13週間下痢の再発がないことと有害事象の発生である。非劣性マージンは15%とした。

結果
219例(冷凍群108例、新鮮群111例)がmodefied ITT解析に、178例(冷凍群91例、新鮮群87例)がper−protocol解析に含められた。per-protocol解析では、臨床的治癒は冷凍群で83.5%、新鮮群で85.1%であった(difference:-1.6%, 95%CI:-10.5% to ∞、P=0.01 for noninferiority)。mITT解析では、冷凍群で75.0%、新鮮群で70.3%であった(difference:4.7%, 95%CI:−5.2% to ∞、P<0.001 for noninferiority)。有害事象や重大な有害事象に群間差はなかった。

結論
成人の再発性CDIや難治性CDIにおいて、冷凍糞便移植は新鮮糞便移植と比較しても臨床的な下痢の治癒率を悪化させなかった。このような状況で、冷凍糞便移植はよい選択肢になる。

◯この論文のPICOはなにか
P:再発性CDI、難治性CDI
I:冷凍した糞便の移植(冷凍群)
C:新鮮な糞便の移植(新鮮群)
O:13週間以内の下痢に関連したCDIの再発がないこと、有害事象の発生

inclusion criteria:18歳以上
exclusion criteria:好中球減少症(500/μl未満)、末梢血白血球>30000/μl、中毒性巨大結腸症

CDIの定義
酵素免疫測定法によるC.difficile toxinの検出、C.difficile toxin B遺伝子をターゲットとしたポリメラーゼ連鎖反応、24時間以内に3回以上の下痢が48時間以上持続する状態

再発性CDIの定義
10日以上のCDI治療の終了後8週間以内に、CDIの症状が48時間以上持続すること。

難治性CDIの定義
CDIによる下痢の持続や悪化で、以下の所見が1つ以上あること:ongoingな腹痛があること、38.0℃以上の発熱、5日以上バンコマイシン500mgを1日4回投与しているにもかかわらず末梢血白血球15000/μl以上

重大な有害事象の定義
死亡、致死的イベント、新規の入院、入院の延長、通常の日常生活を送れない状態

手順
50mlの糞便を注腸投与する。4日以内に症状の改善がなければ、同じドナーから採取した糞便を割り付けられた方法で再度投与する。それでも効果がない場合には、再度糞便移植を行うか、抗菌薬を投与する。

◯baselineは同等か
同等。
characteristics

◯結果
地域:カナダの6施設
登録期間:2012年7月から2014年9月
観察期間:13週間
無作為化:コンピュータによって生成された乱数を用いる。ブロック化、層別化(年齢、市中・医療機関関連、再発回数)を行い無作為化する。
盲検化:治療介入者、患者は盲検化されている。
必要症例数:156例(primary endpointは新鮮群で85%、αlevel5%、power80%、非劣性マージン−15%)
症例数:232例(冷凍群:114例、新鮮群:118例)
解析:mITT解析とper−protocol解析

冷凍群114例のうち、4例が同意の撤回のため、2例が安全性の理由のため糞便移植を受けていない。
新鮮群118例のうち、3例が同意の撤回のため、4例が安全性の理由のため糞便移植を受けていない。

result
(tableはすべて本文から引用)

◯感想/批判的吟味
・mITT解析、per-protocol解析ともに非劣性を証明している。
・約80%の患者で再発がなく、非常に効果的な方法だと思う。
・現時点で臨床応用しようとした場合には、糞便の入手方法が問題になる。