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急性心筋梗塞を合併した急性大動脈解離

突然発症の胸痛を主訴に搬送された50代男性。心電図は胸部誘導はterminal inverted Tであり、すぐにカテの手配。エコーでも前壁中隔はhypokineisisだったけど、著明なバルサルバ洞と上行大動脈の拡大もあった。中等度のeccentricなARもある。大動脈解離(AAD)を疑ってCTとったら、まさに。

AADで右冠動脈入口部をからんでいるのはたまに見かけるが、左はなかなかいない。当院がカバーしている医療圏では、AADはかなり多い方なので注意はしているが、ちょっとひやっとする。抗血小板薬を飲ませなくてよかった。

ということで、今日は急性心筋梗塞(AMI)を合併したAADのcase reportをcheck。discussionのまとめ。

Acute Aortic Regurgitation with Myocardial Infarction: An Important Clue for Aortic Dissection
J Emerg Med. 2013;44(1):e5

あるretrospective reviewによると、Stanford A型 AADで入院となったもののうち5%にしかST上昇型心筋梗塞(STEMI)は合併していないが、そのサブグループは36%と高い死亡率であった。プラークの破たんによるAMIもAADによるAMIも臨床所見及び心電図は類似しており、鑑別は難しい。

重要なのは大動脈弁閉鎖不全症(AR)である。Stanford A型AADの約1/3でARmurmurを聴取することができ、エコーはより感度が高い。Stanford A型AAD50例に対し施行した経胸壁心エコー(TTE)では、44%(22人)に機械的なARを認め、16例が弁形態が正常、7例が大動脈拡大に伴うAR、8例が弁尖の落ち込み、5例が大動脈弁開口部へのflapの落ち込みであった。

手術が予定されている高度ARの9%に冠動脈疾患(CAD)を合併していたという報告があるが、逆に、CADにおけるARの合併については報告がない。Framingham studyでは、traceARは人口の10%程度に見られるが、moderateARは0.5%にしかみられない。したがって、AMIに相当のARを合併していたら、プラークの破たんよりAADによるAMIを疑うべきだ。