虚血性心疾患

【COMMENT】DANAMI 3-DEFER試験

STEMIに対しPOBAが行われたのは印象的なことで、それは梗塞サイズの縮小、LVEFの改善、短期・長期の死亡率の改善をもたらした。それから多くの研究でアウトカムの改善が試みられた。ルーチンのステント留置は再狭窄を減少させたが、梗塞サイズや死亡率の減少にはつながらなかった。

primary PCIの5−10%ではno-reflowや末梢塞栓が起こり、微小血管も含めると65%でno-reflowを起こしている。no-reflowを減らすための薬物治療も試みられており、糖蛋白Ⅱb/Ⅲa阻害薬が最も効果があった。血栓吸引がno-reflowを減らすという仮説があり、単施設無作為化試験の結果は有望であったが、さらに大規模な多施設試験では死亡率を減少させなかった上に、脳梗塞の増加という安全性への疑問が出てきた。

Lancetに、多施設オープンラベル無作為化試験であるDANAMI 3-DEFER試験の結果がpublishされた。DANAMI 3試験プログラムは再灌流障害を減らしアウトカムを改善させることや、ステント留置を延期すること、ポストコンディショニング、非梗塞血管に対する早期のインターベンションにより臨床的なアウトカムを改善させることを目的としたもので、DANAMI 3-DEFER試験はその一部である。

小規模無作為化試験(n=101)では、no-reflowのハイリスクの患者でステント留置を避けることで、no-reflowを減少させた。

DANAMI 3-DEFER試験では、症例を選択せず、サンプルサイズはさらに大きしている。急性期はPOBAを行い、72時間後にステント留置をすることで、急性期にステント留置を行うより、全死亡、心不全による入院、心筋梗塞、計画されていない非梗塞血管の血行再建が減少するか評価したものである。

両群でPCI後のTIMIflowは変わらず、またアウトカムにも差はなかった。唯一の好ましい結果としては、1年後のLVEFのわずかな改善だけである(60%vs57%)。しかし、これは急性期の責任血管再血行再建の増加に相殺される。

しかしこの試験の結果では、急性期にステント留置をしないことでno-reflowを回避できないとは結論付けられない。理由は3つ。1つめは、パワー不足であること。主要評価項目は5%/年と想定(13%)より低かったためである。2つめは、POBAからステント留置までの時間(3日)が、DEFER-STEMI試験(6時間)より長かったことで、これは緊急のステント留置を増やす要因になった可能性がある(11例、2%)。3つめは臨床的アウトカムをエンドポイントにしたこと。ステント留置を延期することが有効なら、まず冠血流が増加し、梗塞サイズが減少し、そして最終的に臨床的なアウトカムが改善するはずである。残念なことにこの試験では、STの低下やMRIでの梗塞サイズは測定されていない。