抗血栓療法

静脈血栓塞栓症 エドキサバン(リクシアナ®)はワルファリンに対し非劣性 Hokusai-VTE試験

Edoxaban versus warfarin for the treatment of symptomatic venous thromboembolism.
N Engl J Med. 2013;369:1406-15

《要約》
背景
静脈血栓塞栓症(VTE)において、経口Xa阻害薬であるエドキサバンがワルファリンの代替薬になるかは知られていない。

方法
無作為化、二重盲検、非劣性試験において急性VTEの患者に初期治療としてヘパリンを投与し、その後エドキサバンとワルファリンの投与の2群に1:1に割り付けた。エドキサバンは60mgを1日1回で、CCr<30−50ml/minもしくは体重60kgの場合は30mgに減量した。治療期間は3−12ヶ月とした。主要有効性評価項目は症候性VTEの再発、主要安全性評価項目は大出血と臨床的に関連する非大出血である。

結果
深部静脈血栓症(DVT)が4921例、肺塞栓症(PE)が3319例。ワルファリン群でTTRは63.5%であった。エドキサバン群では主要安全性評価項目が130例(3.2%)、ワルファリン群では146例(3.5%)であった(hazard ratio:0.89, 95%CI:0.70-1.13)。主要安全性評価項目は、エドキサバン群で349例(8.5%)、ワルファリン群で423例(10.3%)であった(hazard ratio:0.81, 95%CI:0.71-0.94)。その他の有害事象の発現率は2群間で同等であった。NT-proBNPで評価した右心不全を合併したのは938例で、エドキサバン群の3.3%、ワルファリン群の6.2%であった(hazard ratio:0.52, 95%CI:0.28-0.98)

結論
初期治療でヘパリンを使用した後に1日1回のエドキサバン投与に切り替えることは、質の高い標準治療に対し非劣性であり、出血を有意に減らす。

◯この論文のPICOはなにか
P:急性症候性DVT/PE
I:エドキサバンの投与(エドキサバン群)
C:ワルファリンの投与(ワルファリン群)
O:primary efficacy endpointは症候性VTEの再発(深部静脈血栓症、非致死的・致死的PE)、principal safety endpointは臨床的に関連した出血(大出血、臨床的に関連した非大出血)

inclusion criteria:18例以上、急性症候性DVT(膝窩、大腿、腸骨静脈)、急性症候性PE(DVTの有無を問わない)
exclusion criteria:ヘパリン、ワルファリンの禁忌、48時間以内に治療量のヘパリンが投与された患者、低分子ヘパリンの長期投与が予想される癌患者、ワルファリン療法が必要な患者、1日100mg以上のアスピリンの投与、DAPTCCr<30ml/min

手順:エノキサパリンまたはヘパリンを少なくとも5日間投与する。double-blind, double-dummyで、エドキサバンまたはワルファリンを投与する。エドキサバンはヘパリンの初期投与中止後に開始する。投与量は60mgを1日1回で、CCr30−50ml/min・体重60kg以下・P糖蛋白阻害薬の内服のいずれかに当てはまれば30mgに減量する。ワルファリンはヘパリンの初期治療と並行して行われ、PT−INR2.0−3.0で維持する。PT−INRは少なくとも毎月測定される。ワルファリン群ではPT−INRの実測値が、エドキサバン群にはシャムが示され、投与量の調整を行う。内服期間は3−12ヶ月の間で治療を行う医師が決定する。

◯ランダム化されているか
interactive web based systemを用いてランダム化している。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢55歳、体重60kg以下が12%、CCr30−50ml/minが6%、エドキサバン減量基準を満たす割合17%、NT−proBNP500pg/ml以上28%、DVT/PEの原因(不明65%、一時的な要因27%、悪性腫瘍9%、VTE既往19%)

◯症例数は十分か
primary efficacy endpointは3%で起こると仮定し、ハザード比の信頼区間の上限が1.5(ワルファリン療法の70%に相当)、αlevel0.05、power85%として、必要症例数は7500例と算出されている。エドキサバン群で4143例、ワルファリン群で4149例の8292例がランダム化されている。

◯盲検化されているか
double blind。エドキサバン群のPT−INRはシャムを用いている。outcome評価者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
modified ITT解析。

◯結果
12ヶ月間治療を続けた症例は40%。
99%の症例で、エドキサバンのアドヒアランスが80%以上であった。
ワルファリン群のPT−INRのTTRは63.5%であった。
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
シャムを用いて盲検化を維持し、エドキサバンの服薬率もよく、TTR63%(これは高いとは言えないかもしれないが)と、EINSTEIN試験より内的妥当性が高い印象を受ける。もちろん、その効果について直接は比較できないわけだけど。