抗血栓療法

静脈血栓塞栓症 リバーロキサバン(イグザレルト®)の単剤治療 EINSTEIN試験

Oral rivaroxaban versus standard therapy for the treatment of symptomatic venous thromboembolism: a pooled analysis of the EINSTEIN-DVT and PE randomized studies.
Thromb J. 2013;11:21

《要約》
背景
静脈血栓塞栓症(VTE)に対する標準的治療はヘパリンとワルファリンの併用である。注射や薬効のモニタリングが不要のdirect oral anticoagulantsが、急性の有症候性VTEに対し研究されている。

方法
EINSTEIN−DVT試験とEINSTEIN−PE試験の、事前に指定したプール解析により、リバーロキサバンの有効性と安全性を標準療法と比較した(リバーロキサバンは最初の21日間は15mgを1日2回、それ以降は20mgを1日1回内服する。標準療法はエノキサパリン1.0mg/kgを1日2回注射し、ワルファリンもしくはアセノクマロールを内服する)。3,6,12ヶ月後にVTEの再発と出血の評価を行う。

結果
リバーロキサバン群4151例、標準治療群4131例の計8282例が登録された。主要評価項目はリバーロキサバン群で86例(2.1%)、標準治療群で95例(2.1%)認めた(hazard ratio:0.89, 95%CI:0.66-1.19)。大出血はリバーロキサバン群で40例(1.0%)、標準治療群で72例(1.7%)であった(hazard ratio:0.54, 95%CI:0.37-0.79)。悪性腫瘍、大きな血栓、VTE再発例などのサブグループでも有効性と安全性は標準治療と同等であった。

結論
リバーロキサバン単剤療法の有効性は標準療法と同等であり、大出血は有意に少なかった。有効性と安全性はサブグループでも一貫していた。

◯この論文のPICOはなにか
P:静脈血栓塞栓症
I:リバーロキサバンの内服(リバーロキサバン群)
C:エノキサパリン皮下注と、ワルファリンもしくはアセノクマロールの内服(標準治療群)
O:有効評価項目は致死的・非致死的PE/DVT、主要安全評価項目は臨床的に関連した大出血・小出血

inclusion criteria:症候性の深部静脈血栓症(DVT)/肺血栓塞栓症(PE)
exclusion criteria:治療量の低分子ヘパリン・フォンダパリヌクス・未分画ヘパリンの48時間以内の使用、血栓除去療法、IVCフィルター、血栓溶解療法、エノキサパリン・ワルファリン・アセノクマロールに対する禁忌、CCr<30ml/min

手順:ランダム化の後48時間以内に割り付けられた治療を開始する。リバーロキサバンは、最初の21日間に15mgを1日2回内服し、それ以降は15mgを1日1回内服する。標準治療は、エノキサパリンを1.0mg/kgを1日2回皮下注し、ワルファリンもしくはアセノクマロールを内服する(PT-INR2.0−3.0)。治療期間は3,6,12ヶ月で、参加施設の地域のガイドラインに基づいて決定される。

◯ランダム化されているか
本文にはその方法についての記載はない。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢57歳、DVTのリスク(外科手術・外傷18%、DVT既往19%、悪性腫瘍5%、エストロゲン療法8%、安静状態15%、凝固疾患6%)。

◯症例数は十分か
非劣性マージン1.75、power90%。αlevel0.05としている。標準治療群のイベント発生率や必要症例数については本文には記載がない。

◯盲検化されているか
患者、治療介入者は盲検化されていないopen-labelの試験と思われる。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
非劣性試験であるが、primary efficacy endpointはITT解析のみ行われており、per-protocol解析は行われていない。ただ、割り付けが守られていないのは0.5%なので解析にはほとんど影響がないのかもしれない。primary safety endpointはper-protocol解析で行なわれている。

◯結果
治療が行われなかった症例は、リバーロキサバン群で14例、標準治療群で21例であった。また、リバーロキサバン群のうち6例に標準治療が行われている。 平均治療期間はリバーロキサバン群207日、標準治療群203日と有意差なし。 標準治療群でエノキサパリンの投与期間の中央値は6日で、投与中止時にPT−INRが2.0を超えていたのは82%であった。ワルファリンの平均TTRは61.7%で、PT-INR>3.0が16%、PT−INR<2.0が22.3%であった。

リバーロキサバン群で80%以上服薬遵守していたのは93.5%であった。

result1
result2
(いずれも本文から引用)

◯感想/批判的吟味
・非劣性試験でITT解析のみでper−protocol解析は行われていないが、脱落率は0.5%と低いため影響はほとんどないかもしれない。
・TTR61%と低く、これは標準治療群の血栓・出血イベントを増やす方に働くかもしれない(リバーロキサバンはROCKET−AF試験でもTTRが低かった)。