抗血栓療法

冠動脈疾患標準治療への超低容量リバロキサバン追加 COMPASS試験

Rivaroxaban with or without Aspirin in Stable Cardiovascular Disease.
N Engl J Med. 2017 Aug 27. doi: 10.1056/NEJMoa1709118. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:冠動脈疾患、末梢血管疾患
I/C:リバロキサバン2.5mg×2+アスピリン100mg、リバロキサバン5mg×2、アスピリン100mgの3群比較
O:心血管死、脳梗塞、心筋梗塞

死因が明確である非心血管死以外は、心血管死としてカウントする。
虚血性疾患死(CHD death)=心筋梗塞による死亡、心臓突然死、心血管治療による死亡

安全性主要評価項目は、致死的出血、重要臓器不全の症候性出血、再手術を要する外科創部出血、入院を要する出血

inclusion criteria:65歳未満なら糖尿病や喫煙などの他のリスクが2つ以上あることなど
exclusion criteria:高い出血リスク、DAPT、他の抗血栓薬の使用など

◇試験の概要
デザイン:RCT(二重盲検、ダブルダミー、3×2 factrial design)
地域:33ヶ国 602施設
登録期間:2013年3月〜2016年5月
観察期間:23ヶ月
必要症例数:27400例(A単独群でpirimary endpointが3.3%/人年、Rの2群で20%の相対リスク減少)
症例数:27395例
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(バイエル社)

◇患者背景

(本文から引用)

平均年齢68歳、OMI60%、冠動脈疾患90%、アジア人15%、βblockerやACE阻害薬/ARBは70%、脂質低下薬は90%

◇結果

(本文から引用)


(本文から引用)

A単独に比べR+Aで、primary endpointが有意に減少。
絶対リスク減少1.3%、相対リスク減少24%

心筋梗塞は減っていないので、心血管死の減少は脳梗塞死によるものかもしれないが、虚血性疾患死は有意に減少しているのは???

R単独では、primary endpointで差はつかない。虚血性脳卒中は減るが、それ以上に出血性脳卒中は増加する。

R+Aでは、やはり大出血は増加し、消化管と皮膚からの出血が増加している。

◇感想
冠動脈疾患を対象として、リバロキサバン2.5mg×2+アスピリン100mg、リバロキサバン5mg×2、アスピリン100mgの3群で、心血管死・脳梗塞・心筋梗塞をアウトカムに比較した試験。

R単独ではA単独より、心血管死・脳梗塞・心筋梗塞の複合エンドポイントは変わらず、大出血は有意に増加させた。なので、アスピリンの代わりにあえてリバロキサバン5mgを使用する理由はない。

ただ、アスピリンにリバロキサバン2.5mg追加すると、アウトカムは改善する(主に心血管死と脳梗塞の減少)。

欧米人に比べると虚血リスクが低い日本人でも有効性があるのか(サブグループ解析をみると有効っぽい)、出血がさらに増えるのではないか、容量は2.5mgで良いのかなど疑問はある。日本人も1500例ほど登録されているようなので、これからデータが出てくるだろう。非弁膜症性心房細動でもDOACがunder-doseで処方されることが少なくない日本では、アスピリン+リバロキサバンという処方は、たとえ有効性が確認されたとしても流行らないだろう。メーカーが、超低容量というなんか出血が少なそうな”響き”、”イメージ”を上手く使って売り込めば、どうかわからないが。

若くて、血圧コントロールが良くて出血リスクが低い人なら、リバロキサバン2.5mgを加えるのはありか。