不整脈

心房細動+ステント留置後の抗血栓療法 ダビガトランなら150mg BIDの方がいい

Dual Antithrombotic Therapy with Dabigatran after PCI in Atrial Fibrillation.
N Engl J Med. 2017 Aug 27. doi: 10.1056/NEJMoa1708454. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:非弁膜症性心房細動+冠動脈疾患(ステント留置後)
I:P2Y12阻害薬に、ダビガトラン110mg BID、または150mg BIDの追加
C:DAPT+ワーファリン
O:大出血、または臨床的に問題となる出血

secondary endpoint:心筋梗塞、脳梗塞、全身性塞栓症、予定していない血行再建

手順:非弁膜症性心房細動(発作性・持続性・慢性でもどれでもいいが二次性のものはダメ)で、ACSまたは安定狭心症でPCIが施行された患者が対象。ステントはDESでもBMSでもどちらを使用してもよく、PCI成功後120時間以内に登録し、3群に割り付ける。なお、米国以外の国の高齢者(≧70歳)は3剤併用群もしくは110mgBIDの2群に割り付け。VKA+DAPTの3剤併用期間は、BMSなら1ヶ月、DESなら3ヶ月で、アスピリンを中止する。P2Y12阻害薬は、いずれの群もクロピドグレルかチカグレロルを使用。

exclusion criteria:機械弁、生体弁、eGFR<30ml/minなど

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験)
地域:41ヶ国 414施設
登録期間:2014年7月21日〜2016年10月31日
観察期間:14ヶ月(中央値)
必要症例数:最初は8520例だったが、途中で2500例に変更(3剤併用群のイベント発生14%、非劣性マージン1.38)。血栓塞栓イベント(心筋梗塞、脳梗塞、全身性塞栓症、予定していない血行再建)は当初primary endpointに含められていたが、パワー不足のためsecondary endpointへ変更。
症例数:2725例
追跡率:99.8%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ベーリンガーインゲルハイム社)。同社はデータ解析、論文の執筆にも関与している。

◇患者背景

(本文から引用)

両群間にちょっと差がありそうだが、統計学的な差については記載がない。

平均年齢70歳
CHA2DS2-VASc:3.8、HAS-BLED:2.8
ACS50%で、82%にDES留置
P2Y12阻害薬はクロピドグレルが88%
3剤併用群のワーファリンのTTRは64%

◇結果

(本文から引用)

出血はダビガトラン110mgBIDでも150mgBIDでも、有意に少ない。


(本文から引用)

しかし、心筋梗塞・ステント血栓症についてはダビガトランが良いとは決して言えない。110mgBIDでは統計学的な有意差はないが、多い傾向にある。

◇まとめと感想
ステント留置直後の非弁膜症性心房細動において、VKA+DAPTの3剤併用療法に比べ、ダビガトランとP2Y12阻害薬の2剤併用の方が、出血が少なかった。PIONEERーAF PCI試験でも同様だが、出血という点に関して言えば、VKA+DAPTよりもDOAC+P2Y12阻害薬が良い。

ただ、心筋梗塞・ステント血栓症については、ダビガトラン110mgBID+P2Y12阻害薬で多い傾向にある。心筋梗塞に関しては、もとのサンプルサイズでやっていれば、統計学的な有意差もついたかもしれない。ステント血栓症は数が少ないのでなんとも言えないが、この結果で110mgを使おうとは思わない。

その点、150mgBIDだとVKA+DAPTと比較した場合、血栓症・塞栓症に大きな差はないため、150mgBIDを使うという選択肢はありかもしれない。比較的若く腎機能がよいということが条件にはなるが。