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虚血性の重症僧帽弁閉鎖不全症では、形成術がよいか弁置換術がよいか

Mitral-Valve Repair versus Replacement for Severe Ischemic Mitral Regurgitation
N Engl J Med 2014; 370:23

ガイドラインでは、虚血性の重症僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対して僧帽弁形成術もしくは弁置換術が推奨されているが、どちらがよいかエビデンスはない。周術期の死亡率は形成術で低いが、弁置換術ではMR再発のリスクが低いため、長期的にはその差は修正される。周術期死亡率と長期的な成績とはトレードオフである。

〇この論文のPICOはなにか
P:虚血性の重症MRにおいて
I/C:僧帽弁形成術を行うか、置換術を行うか
O:左室リバースリモデリングの程度(12ヶ月後のLVESVI)に影響があるか
 secondary endpointとして、MACCE(死亡、脳梗塞、再僧帽弁手術、心不全による入院、NYHA分類の悪化)が設定されている。

〇ランダム化されているか
We randomly assigned…と記載はあるが、その方法についての記載はない。

〇baselineは同等か
性、年齢、DM・腎不全などの併存疾患、以前のCABG/PCI、af、LVEF、LVESVI、NYHA分類、同時に行われた治療(CABG、三尖弁形成術、maze)などすべて同等

〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析が行われている。

〇盲検化(masking/blinding)されているか
治療介入者は盲検化していない
患者もおそらく盲検化していない
outcome評価者は独立した委員会
解析者については記載なし

〇症例数は十分か
baselineのLVESVI100ml/m2に対し形成術群では20ml/m2の改善、弁置換術群では35ml/m2の改善がみられ、検出力0.9、αlevel0.05として、必要症例数は250例と算出されている。

〇結果の評価
形成術群:126例、弁置換術群:125例
形成術が予定されていた11例に弁置換術が、弁置換術がよていされていた1例に形成術が施行されている。
baselineのLVESVIはそれぞれ61.1±26.2、65.7±27.4
12ヶ月後のLVESVIはそれぞれ54.6±25.0、60.7±31.5
平均変化量は、-6.6と-6.8であり有意差なし。
中等度から高度のMRの残存は形成術群で32.6%(中等度:28.4%、高度:4.2%)で、弁置換術群で2.3%(すべて中等度)であった。死亡はそれぞれ14.3%、17.6%(hazard ratio with repair, 0.79; 95% CI, 0.42 to 1.47; P = 0.45)と、12ヶ月の時点では有意差がついていないものの弁置換術群で多い傾向があった。ちなみに、30日間の死亡率でも1.6%(2death)、4.0%(5death)と弁置換術群で多く見られた。

〇この論文を読んで
12ヶ月の時点では、リバースリモデリングの程度(≒LVESVI)や死亡率に有意差はないが、形成術群で良い傾向があった。しかし、中等度・高度のMRが残存している割合は有意に多く、MRがあれば予後は悪くなるため、その影響はより長期でみないと判断できないだろう。