不整脈

CHA2DS2-VAScスコア2点以上では、PVI後の抗凝固療法中止により脳梗塞リスクが上昇する可能性

Assessment of Use vs Discontinuation of Oral Anticoagulation After Pulmonary Vein Isolation in Patients With Atrial Fibrillation
JAMA Cardiol. Published online November 23, 2016.

《要約》
重要性
肺静脈隔離(PVI)は心房細動患者に対する推奨された治療だが、脳梗塞リスクの低下をもたらすかどうかは明らかではない。

目的
PVI後に抗凝固療法を中止した患者の割合とCHA2DS2-VSAcスコア、PVI後の脳梗塞の予測因子の同定、ガイドラインに基づく抗凝固療法の有無での心血管イベントリスクを評価すること。

デザイン・セッティング・患者
Swedish national health registriesを用いて、後ろ向きコホート研究を行なった。2006年1月1日から2012年12月31日のデータで、平均フォローアップ期間は2.6年、心房細動でPVIが施行された1585例が対象である。データ解析は2015年1月1日から2016年4月30日に行なわれた。

暴露
ワルファリン

アウトカム
虚血性脳梗塞、頭蓋内出血、死亡

結果
この集団は1585例で、男性が73.0%、年齢59±9.4歳、CHA2DS2-VAScスコア1.5±1.4だった。1585例のうち、1175例がPVI後1年以上フォローアップされた。360例は1年以内にワルファリンが中止された。CHA2DS2-VAScスコアが2点以上の患者のうち、ワルファリンを中止した患者では虚血性脳梗塞の発症リスクが、ワルファリンを継続した患者より高かった(5イベント/312年[1.6%/年]、4イベント/1192年[0.3%/年]、P=0.046)。CHA2DS2-VAScが2以上の患者や虚血性脳梗塞の既往がある患者では、ワルファリンが中止にあると虚血性脳梗塞の発症リスクが増加する(それぞれ、HR:4.6、95%CI:1.2−17.2、HR:13.7、95%CI:2.0−91.9)。

結論
これらの結果は、ハイリスクの患者、特に脳梗塞の既往がある患者において、PVI後にワルファリンを中止することは安全でないことを示唆している。

◇この論文のPECOは?
P:PVIを行なった心房細動患者
E/C:ワルファリンの中止、または継続
O:虚血性脳梗塞、頭蓋内出血、死亡

◇デザイン、対象、観察期間
・後ろ向き
・CHA2DS2-VAScスコア2点以上と脳梗塞の既往がある患者の脳梗塞リスクは、COX比例ハザードモデルを用いた。脳梗塞に関連した因子の算定には、ロジスティック回帰分析を行なった。
・1585例
・観察期間:平均2.6年

characteristics

◇結果
result

CHA2DS2-VAScスコアが0−1では、脳梗塞の発症率に差はなかった。

◇感想
CHA2DS2-VAScスコアが高ければ、内皮障害や繊維化が進んでいるし、心房細動の再発も起こりやすいと考えられるので、抗凝固療法を中止することで脳梗塞リスクが上昇するのは合点がいく。

PVI後3ヶ月は抗凝固療法を継続し、それ以降はCHA2DS2-VASc0−1なら、中止をしても脳梗塞のリスクは上昇しないかもしれない。