不整脈

高容量のカフェインを摂取しても、期外収縮は増えない

Short-term Effects of High-Dose Caffeine on Cardiac Arrhythmias in Patients With Heart FailureA Randomized Clinical Trial
JAMA Intern Med. Published online October 17, 2016.

《要約》
重要性
カフェインの催不整脈性については議論がある。心室性不整脈のリスクが高い左室収縮不全の心不全患者に対し、高容量のカフェインの効果を評価した研究はほとんどない。

目的
高容量カフェインとプラセボそれぞれの、安静時および運動負荷時の上室性・心室性不整脈の頻度を比較すること。

デザイン、セッティング、参加者
二重盲検、クロスオーバー、無作為化試験を3次医療の大学病院で行った。中等度から高度の収縮不全(EF<45%)で、NYHAⅠ-Ⅲの慢性心不全患者を組み入れた。

介入
デカフェのコーヒー100mlにカフェイン100mgまたはラクトースを加え、1杯1時間で、計5杯飲む。1週間のウォッシュアウト期間を設け、そのプロトコールを繰り返す。

アウトカム
連続心電図モニタリングで記録された、心室性期外収縮と上室性期外収縮の回数と割合。

結果
中等度から高度の収縮不全がありICDが植え込まれている患者51例を登録した(平均年齢60.6±10.9歳、男性37例)。心室性不整脈および上室性不整脈の回数は、両群間で有意差はなかった(心室性不整脈:185vs239beats P=0.47、上室性不整脈:6vs6beats P=0.44)。PVC2連、二段脈、非持続性心室頻拍(NSVT)も同様であった。運動負荷検査では、心室および上室性期外収縮、運動時間、推定最大酸素消費量、心拍数に対するカフェインの影響はなかった。血中カフェイン濃度が高い患者、低い患者、またはプラセボ群で心室性期外収縮に差はなかった(91vs223vs207beats)。

結論
高容量カフェインの急速摂取は、心室性不整脈のリスクが高い収縮不全の患者の不整脈を増加させない。

◇この論文のPICOはなにか
P:EF<45%の収縮不全を有するNYHAⅠ-Ⅲの心不全
I:カフェイン500mg/日の摂取(カフェイン群)
C:ラクトースの摂取(プラセボ群)
O:安静時および運動負荷時の心室性および上室性期外収縮

inclusion criteria:3ヶ月以内に施行した心エコーでEF<45%であること、安全のため試験開始初期(最初の25例まで)ではICDが植え込まれていることを必須とした、ICDが正常に機能していること
exclusion criteria:カフェインやラクトースを摂取できないこと、身体的または機能的に運動の制限がある、β遮断薬とアミオダロン以外の抗不整脈薬の使用、shockやATPを必要とする不整脈のエピソードが2ヶ月以内にあること、2ヶ月以内の心不全に関連した入院

手順:まず、7日間のカフェインのウォッシュアウト期間を設ける。ウォッシュアウト期間終了後、リサーチクリニックを訪れる。AM8時にリサーチクリニックに来院し、AM9時より連続心電図モニタリングと割り付けられたデカフェの摂取を開始する。PM1時に最後のデカフェの摂取を開始し、PM2時からトレッドミル検査を開始する。検査終了後に再度7日間のカフェインのウォッシュアウト期間を設け、クロスオーバーさせ、同様の介入を行う。

◇baselineは同等か
characteristics
クロスオーバー試験なので群間差はないが、カフェイン入りのデカフェを飲用している際に、2例が嘔気と頭痛があり、飲用を中止している。

◇結果
地域:ブラジル
登録期間:2013年3月5日〜2015年10月2日
無作為化:コンピュータプログラムによる無作為化を行っている。
盲検化:患者、治療介入者、アウトカム評価者、解析者はすべて盲検化されている。
必要症例数:47例(カフェイン摂取により心室性期外収縮が100beat増加する、power80%、αlevel0.05と仮定)
症例数:51例
追跡率:100%
解析:ITT解析
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result

◇批判的吟味
・primary endpointに有意差はないが、必要症例数は満たしているため、カフェインで期外収縮は増えないと考えていいだろう。
・高容量のカフェインを急速に摂取した場合の影響をみたものであって、慢性的に摂取することの影響はわからない。
・臨床的なアウトカムがどうなるかはわからない(PVCが増えなくても臨床的なアウトカムは悪化するかもしれない)。

◇感想
動物実験でカフェインによる不整脈の増加が報告され、80−90年代に人でも心室性期外収縮が増えるかリサーチされたが、関連は見出せていない。Myersの報告では、OMIで300mgのカフェイン投与により心室性期外収縮が26%増えたと報告されたが、メタアナリシスでは、カフェインの摂取と心室性期外収縮の関連はなかった。

高容量のカフェインを急速に摂取しても、心室性および上室性期外収縮は増えないという結果で、過去のメタアナリシスと矛盾しない。カフェインの血圧上昇作用や利尿作用には注意は必要であるが、患者さんには特別カフェインの摂取は控えてもらってないし、この試験の結果からも、あえて控えてもらわなくてもよさそう。