糖尿病

LEADER試験 リラグルチド(ビクトーザ®)の心血管イベント一次予防効果

Liraglutide and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2016 Jun 13. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
2型糖尿病患者に対する標準治療に、GLP−1アナログであるリラグルチドを加えることの心血管への効果は明らかではない。

方法
高い心血管リスクを有する2型糖尿病患者を、リラグルチドまたはプラセボを内服する群に無作為に割り付け、二重盲検試験を行った。主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞のいずれかの初回の発生である(time-to-event analysis)。主要な仮説は、リラグルチドのプラセボに対する非劣勢で、非劣勢マージンは1.30(95%信頼区間の上限)である。

結果
9340例を無作為化した。フォローアップ期間の中央値は3.8年である。主要評価項目はプラセボ群(694/4672例、14.9%)よりリラグルチド群(609/4668例、13.0%)で有意に少なかった(HR:0.87、95%CI:0.78−0.97、P=0.01 for superiority)。心血管死はプラセボ群(278例、6.0%)よりリラグルチド群(219例、4.7%)で有意に少なかった(HR:0.85、95%CI:0.66−0.93)。全死亡はプラセボ群(447例、9.6%)よりリラグルチド群(381例、8.2%)で有意に少なかった(HR:0.85、95%CI:0.74−0.97)。非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞、心不全による入院は、リラグルチド群はプラセボ群より有意に低くはなかった。リラグルチド中止に至る有害事象の中で最も多かったのは、胃腸症状である。リラグルチド群の膵炎の発生は、プラセボ群より有意に少なくはなかった。

結論
2型糖尿病において、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞の初回の発生率(time-to-event analysis)は、プラセボ群よりリラグルチド群で有意に低かった。

◯この論文のPICOはなにか
P:HbA1c7.0%以上の2型糖尿病
I:リラグルチド1.8mgの皮下注(リラグルチド群)
C:プラセボの皮下注(プラセボ群)
O:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞の複合エンドポイント

inclusion criteria:いままで経口血糖降下薬とインスリンの治療を受けていないこと、50歳以上でひとつ以上の心血管疾患を有すること(冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、ステージ3以上のCKD、NYHAⅡ-Ⅲの心不全)、60歳以上でひとつ以上の心血管リスクを有すること(微量アルブミン尿、蛋白尿、左室肥大
、左室収縮障害または左室拡張障害、ABI<0.9)
exclusion criteria:1型糖尿病、GLP−1受容体作動薬・DPP−4阻害薬・プラムリンチド・即効型インスリンの使用、MEN2型または甲状腺髄様癌の既往や家族歴、14日以内の冠動脈イベントまたは脳血管イベント

◯baselineは同等か
同等。薬剤に関しては、β遮断薬が有意にリラグルチド群で多く、有意ではないが抗血小板薬もリラグルチド群で多い(P=0.06)。ACE阻害薬、ARB、利尿薬、スタチン、経口血糖降下薬は両群間で差はない。
characteristics

◯結果
地域:32ヶ国、410施設
登録期間:2010年9月〜2012年4月
観察期間:3.8年(中央値)
無作為化:層別化の上、無作為化を施行
盲検化:二重盲検
必要症例数:8754例(両群1.8%のアウトカム発生率、治療の中断10%、非劣勢マージン1.30、power90%、αlevel0.05)
症例数:9340例(リラグルチド群4668例、プラセボ群4672例)
追跡率:96.8%
解析:ITT解析、per protocol解析ともに行われてる
スポンサー:企業の関与あり(試験デザイン、データ収集、解析に関与している)

result

◯感想/批判的吟味
エンパグリフロジンに続き、リラグルチドも心血管イベントを改善させるという驚きの結果だった。エンパグリフロジンでは利尿効果によると思われる心不全の発症を減らしていたが、リラグルチドでは非致死的心筋梗塞が減少していることから動脈硬化イベントが心血管死の減少につながったと考えられる。

同じGLP−1受容体作動薬であるリキセナチドを用いて心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、不安定狭心症による入院)を評価したELIXA試験では、リキセナチドの優越性は証明されなかったことはどのように考えたらよいのだろうか。ELIXA試験は二次予防だったので、一次予防症例が多いLEADER試験(OMIは30%)の方がリスクが低い患者を対象にしているはずなのだが。

心血管イベントの抑制は、GLP−1受容体作動薬のクラスエフェクトではなく、リラグルチドのドラッグエフェクトなのだろうか。

EMPA-REG試験同様、劇的な結果を出したRCTは鵜呑みにせず、今後出てくるデータを確認していきたい。