虚血性心疾患

慢性閉塞性病変(CTO)の治療は、PCIでも薬物療法でも予後に差はない

Optimal Medical Therapy vs. Percutaneous Coronary Intervention for Patients With Coronary Chronic Total Occlusion – A Propensity-Matched Analysis –
Circ J 2016; 80: 211–217

《要約》
背景
慢性閉塞性病変(CTO)における至適薬物療法(OMT)とPCIの長期予後を比較したデータは少ない。

方法・結果
2003年3月から2012年2月に単施設のレジストリに登録されたCTO2024例を対象とし、冠動脈バイパス術が施行された症例を除き、OMT群(664例)、PCI群(883例)に分けた。propensity-score matchingを行った。主要評価項目は心臓死で、観察期間の中央値は45.8ヶ月であった。699例(79.2%)がPCIに成功した。propensity scoreがマッチした533pairで、OMT群とPCI群で心臓死に統計学的有意差はなかった(HR1.57、95%CI:0.91−2.72)。サブグループ解析では、collateral flow grade(0−2vs3)を除いて、PCIと心臓死に交互作用はなかった。

結論
DES時代において、PCIはOMTと比較し心臓死を減少させなかった。

◯論文のPICOはなにか
P:CTO
I:PCI
C:OMT
O:心臓死

inclusion criteria:18歳以上、冠動脈造影にて1つ以上のCTO病変があること、有症候性かつ/または機能的な虚血が証明されていること

exclusion criteria:CABGの既往、心原性ショック・CPR施行例、48時間以内のSTEMI

◯結果
期間:2003年3月ー2012年2月
フォローアップ期間:45.8ヶ月(中央値)
PCI成功:669例(79.2%)
propensity scoreが用いられている。
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
・OMTといっても、その内容(薬剤の種類、内服率)は不明。

・複雑病変、重大な併存疾患、年齢やADLなどの好ましくない背景因子があるとPCIは施行されにくく、propencity score matchingが用いられているが、未知の交絡因子は調整できない。PCI群で全死亡が少なかったり、心臓死が少ない傾向が認められるのは、そういった影響もあるのかもしれない。

・CTOであっても狭心症に対するPCIは、症状をとりQOLを上げるためのもの。

・2つのRCT(EURO-CTO、DECISION CTO)が進行中とのことであり、この結果が待たれる。