不整脈

左心耳閉鎖術/切除術の脳梗塞予防効果

Left Atrial Appendage Closure Reduces the Incidence of Postoperative Cerebrovascular Accident in Patients Undergoing Cardiac Surgery.
Circ J. 2015 Nov 25;79(12):2591-7

《要約》
背景
脳血管イベントは、心臓手術の術後に起こる重大な有害事象であり、それは心房細動がリスク因子であると考えられている。我々は開心術時に、塞栓源と考えられる左心耳の閉鎖術や切除術を行っている。

方法・結果
2009年から2013年に心臓手術を施行した連続1831例の前向き観察研究を行った。左心耳閉鎖術/切除術の有無で、術後6ヶ月以内の脳血管イベントの発生率を比較した。さらに、CHA2DS2−VAScスコアによって層別化した(low risk:<2, high risk:≧2)。合計369例(20.2%)で左心耳閉鎖術/切除術が施行された。それらの患者は左心耳閉鎖術/切除術が行われていない患者より、術前の左房径が大きく、術後の心房細動の発生率が高かったが(45.4mm vs 41.1mm, 49.3% vs 39.1%, いずれもP<0.001)、脳血管イベントの発生率に群間差はなかった(3.5% vs 3.0%, P=0.612)。CHA2DS2−VASc≧2の患者群での多変量解析では、左心耳閉鎖術/切除術と脳血管イベントの関連は認めなかったが、CHA2DS2−VASc<2の患者群では、左心耳閉鎖術/切除術は脳血管イベントの唯一の独立した負の因子であった。

結論
CHA2Ds2−VAScスコア<2であれば、左心耳閉鎖術/切除術は術後早期の脳血管イベントを減少させる。

◯論文のPICOはなにか
P:心臓手術(CABG、弁膜症手術)を行う患者
I:左心耳閉鎖術/切除術あり
C:左心耳閉鎖術/切除術なし
O:術後6ヶ月以内の脳血管イベント(虚血性または出血性脳梗塞、TIA)

◯結果
2009年1月から2013年10月までに心臓手術が施行された連続1831症例。
369/1831例(20.2%)で左心耳閉鎖術/切除術が施行された。
753/1831例(41.1%)で術後に心房細動を認めた。
57/1831例(3.1%)で脳血管イベントの発生があった。

result
(本文より引用)

術後の心房細動の有無に関わらず、CHA2DS2−VAScスコア<2の患者群では左心耳閉鎖術/切除術が独立した負の因子である。

◯感想
CHA2DS2−VAScスコアが低い群、つまり動脈硬化因子をあまり持っていない群では、脳梗塞の塞栓源は主に左心耳血栓と考えられ、左心耳閉鎖術/切除術が効果を示すというのはわかる。しかし、CHA2DS2−VAScスコアが高い群では、左心耳閉鎖術/切除術によってむしろ脳梗塞が増える傾向にある。左心耳閉鎖術/切除術を行うか選択バイアスが入っているためとあるが、よくわからない。