非心臓手術

DECREASE-V試験 予防的血行再建の長期成績

Long-term outcome of prophylactic coronary revascularization in cardiac high-risk patients undergoing major vascular surgery (from the randomized DECREASE-V Pilot Study).
Am J Cardiol. 2009;103:897-901

これは、リスクの高い患者を対象に、大血管手術の前に血行再建を行うことで、周術期の心血管イベントが減るかどうかを検証したDECREASE-V試験の長期成績である。DECREASE-V試験の30日、1年でのoutcomeはこちらを参照。

◯この論文のPICOはなにか
P:腹部大動脈や下肢動脈の手術が予定されており、負荷試験にて広範囲の心筋虚血が証明された患者
I:術前に血行再建を行う(血行再建群)
C:薬物療法のみ(非血行再建群)
O:術後30日までの全死亡、非致死的心筋梗塞の複合エンドポイント

inclusion criteria:70歳以上、狭心症、陳旧性心筋梗塞(病歴、異常Q波)、代償性うっ血性心不全、糖尿病へ薬物療法、慢性腎臓病、脳血管障害の既往

手順:3つ以上のリスクファクターを持ち、負荷試験(ドブタミン負荷心エコー/ドブタミン負荷もしくはジピリダモール負荷心筋シンチグラム)によって広範囲の虚血が証明された患者を、血行再建群と非血行再建群に割り付ける。血行再建としてPCIとCABGのいずれを行うかは主治医が決定する。大血管手術後は1,3,7,30日後に血清トロポニンTの測定と心電図検査を行う。外来に3ヶ月おきに通院し、問診と心電図検査を行い1年間フォローアップする。

◯ランダム化されているか
computer algorithmによって割付を行う。封筒法を用いている。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢70歳、狭心症50%、心筋梗塞の既往100%、うっ血性心不全と脳血管障害が40%、β遮断薬70%、ACE阻害薬50%、スタチン60%、大腿-膝窩動脈手術が半分でもう半分はそれよりも近位部の手術、2枝疾患が1/4、3枝疾患が2/3、LM病変8%。

◯症例数は十分か
DECREASE-Ⅰ試験をもとにprimary endpoint33%、85%のリスク減少があると仮定し、power93%、αlevel5%として、必要症例数は100例と算出されている。血行再建群49例、非血行再建群52例の計101例が登録されている。

◯盲検化されているか
試験の性質上、open label。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。

◯結果
血行再建群49例、非血行再建群52例の計101例で、PCIが32例に施行されている。2例にBMSが、30例にDESが使用されている。

観察期間は2.8年。非血行再建群のうち、フォローアップ期間内に血行再建を行ったのは2例であった(1例はUAPのためにCABGが、もう1例は狭心症の症状増悪のためにPCIが行われている)。

血行再建群vs非血行再建群、HR(95%CI)
primary endpoint:49% vs 42%, 1.51(0.89-2.57)
生存率:64% vs 61%, 1.18(0.63-2.19)

周術期はステント血栓症や重大な出血があり、それが予後に影響を与えた可能性があった。しかし、30日後以降の解析を行っても、両群間に有意差はなかった。

◯感想/批判的吟味
大血管手術を行うハイリスクな患者に、術前に血行再建を行っても長期予後は変わらない。血行再建といっても2/3がPCIで、かつDESが使用されている。なので、これによる周術期の塞栓や出血が増え、悪影響を及ぼした可能性がある。

PCIでは心筋梗塞は予防できないので、血行再建をCABGに限ると異なる結果が出たかもしれない。また、DECREASE-V試験は死亡率が非常に高い。これは冠動脈疾患によるものだけではなく、併存疾患の重症度も関与しているだろう。