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カテーテル挿入時の消毒は、2%クロルヘキシジンで行うべき CLEAN試験

Skin antisepsis with chlorhexidine-alcohol versus povidone iodine-alcohol, with and without skin scrubbing, for prevention of intravascular-catheter-related infection (CLEAN): an open-label, multicentre, randomised, controlled, two-by-two factorial trial.
Lancet. 2015 Sep 17.[Epub ahead of print]

CDCは、CVカテーテル挿入時の消毒にポビドンヨードよりクロルヘキシジンアルコールを推奨している。ただ、head to headで比較した大規模な試験はなかったらしく、それを検証した試験である。

また、それらを用いて消毒をする際に、皮膚の蛋白汚れを落とすために皮膚の拭き取り(scrubbing)を行うが、その効果も検証している。

◯この論文のPICOはなにか
P:動脈カテーテル、血液透析カテーテル、中心静脈カテーテルを挿入される予定の患者
I:カテーテル挿入前の皮膚の消毒をクロルヘキシジン(2%クロルヘキシジン-70%イソプロピルアルコール)で行う(クロルヘキシジン群)
C:ポビドンヨード(5%ポビドンヨード-69%エタノール)で消毒をする(ポビドンヨード群)
O:カテーテル関連感染(CRBSI)の発生率

なお、両群ともscrubbingの有無で1:1:1:1の4群に分ける。

inclusion criteria:18歳以上、上記のカテーテルを48時間以上挿入される予定の者
exclusion criteria:クロルヘキシジンやポビドンヨードに対するアレルギー、カテーテル挿入後48時間以内に死亡しそうな症例、抗菌性物質が塗布されているカテーテルの使用、以前この試験に登録された患者

用語の定義
カテーテル関連感染:菌血症を伴わないカテーテル関連敗血症、もしくはCRBSI
CRBSI:発熱(≧38.5℃)または低体温(≦36.5℃)、カテーテル抜去前後48時間以内の1つ以上の血培陽性、カテーテルへのコロニー形成とカテーテル挿入部位の菌が同じ種・感受性であることもしくは血培陽性までの時間が2時間以上、カテーテル以外に菌血症の明らかな侵入門戸がない
菌血症を伴わないカテーテル関連敗血症:発熱(≧38.5℃)、低体温(≦36.5℃)、カテーテルへのコロニー形成、抗生剤を変更せずカテーテル抜去48時間以内の解熱もしくはカテーテル挿入部位の排膿、他に感染源がない

◯ランダム化されているか
web-based randomisation systemが用いられており、隠匿化・ランダム化ができていると考えられる。

◯baselineは同等か
同等。ざっくりとしたcharacteristicsは以下の通り。
年齢64歳、免疫不全・血液悪性腫瘍・転移性悪性腫瘍はそれぞれ6%、挿入理由は内科的疾患が7%、術者に50例以上の経験があるのは30%、カテーテルの種類(動脈:50%、中心静脈:40%、血液透析:10%)、カテーテル挿入の挿入期間中の抗生剤投与が60%、赤血球輸血17%。

◯症例数は十分か
以前の行われたstudyではクロルヘキシジンを使用することでCRBSIを52−59%減少させることできている。なので、ポビドンヨードによるカテーテル関連感染が5%、クロルヘキシジンによるリスク減少を50%、αlevel0.05、power80%とし、必要症例数を2256例・4512カテーテルと算出している。2349例と症例数は予定より少ないが、カテーテル数は5159と十分な症例が登録されている。

◯盲検化されているか
open-label。
血液やカテーテルを調べる微生物学者と解析者は盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。

◯結果
scrubbingの有無で、カテーテル関連感染、CRBSIに群間差はなかった。

カテーテル関連感染:クロルヘキシジン群0.28/1000カテーテル・日、ポビドンヨード群1.77/1000カテーテル・日(HR0.15、95%CI0.05-0.41)
CRBSI:クロルヘキシジン群0.0.28/1000カテーテル・日、ポビドンヨード群1.32/1000カテーテル・日(HR0.21、95%CI0.07-0.59)
カテーテル関連感染
CRBSI
カテーテルへのコロニー形成
figureはいずれも論文より抜粋

ただ、死亡率には有意差なし。

◯批判的吟味/感想
・open-labelだが、outcome評価者・解析者は盲検化されている。
・primary endpointで有意差あり。
・secondary endpointのひとつであるCRBSIでも有意差があった。これは”血培陽性”という条件を含んでいるので、カテーテル関連感染よりもバイアスが入りにくい。
・ただ、それでも院内死亡率は両群とも34%で、差はない。

今まで血培をとるときは、必ずscrubbingをしていた。コンタミネーションを防ぐために重要だと考えていたけれど、この試験では”scrubbingは意味がない”という結果。ただ、手間・時間・金がかかるわけではないので、今後も続けてしまうと思う。

あと、CRBSIの定義には”血培陽性”というのが含まれていることは知らなかった。そして、米国感染症学会のガイドラインでは、CRBSIを疑うときの血培は末梢の静脈とカテーテルハブからの採取が推奨されているらしく、これも知らなかった。