虚血性心疾患

体温管理療法は心原性ショックを合併した心筋梗塞の血行動態や予後を改善しない

院外心停止での体温管理療法(TTM)については以前記事にした。

院外心停止での体温管理療法 (TTM) 目標体温と継続時間

TTMの有効性が示されたRCTでは心原性ショックは除外されているので、心原性ショックでもTTMが有効かはわからないし、心停止していない心原性ショックでTTMが有効かどうかもわからない(1-3)

Mild Hypothermia in Cardiogenic Shock Complicating Myocardial Infarction – The Randomized SHOCK-COOL Trial.
Circulation. 2018 Jul 19. pii: CIRCULATIONAHA.117.032722. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.117.032722. [Epub ahead of print]

心原性ショックを合併する急性心筋梗塞で、体温管理療法が血行動態や予後の改善につながるか検証したRCT。

【PICO】
P:心原性ショックを合併した急性心筋梗塞
I:体温管理療法(33℃、24時間)
C:通常治療
O:24時間時点のCardiac power index(CPI)

CPI=平均動脈圧×Cardiac index/451

inclusion criteria:SBP90mmHg以下が30分以上持続、SBP90mmHg以上を維持するのにカテコラミンが必要など
exclusion criteria:12時間以上持続する心原性ショック、TTM適応の心停止など

primaryPCIの最中にランダム化を行う。
体温管理療法はinvasive cooling catheter(ZOLL社)を用いる。
全員にSwan-Ganzカテーテル挿入し、8時間おきに測定。

【試験の概要】
デザイン:single center, open-label RCT
地域:ドイツ
登録期間:2012年7月〜2015年3月
症例数:40例(各群20例ずつ)
スポンサー:企業の関与なし

【結果】
TTM群 vs 通常治療群
▶︎CPI(primary endpoint)
0.41 [interquartile range 0.31-0.52] vs 0.36 [interquartile range 0.31-0.48] W/m2; p=0.50
▶︎30日死亡率(secondary endpoint)
60% vs 50%, ハザード比 1.27(95%CI:0.55-2.94)

【まとめと感想】
心原性ショックを合併した急性心筋梗塞に、33℃・24時間の体温管理療法を行っても、有意な血行動態の改善はない。死亡率は体温管理療法で多い傾向だったが、このサンプルサイズなのでなんとも言えない。

院外心停止での体温管理療法で生命予後が改善しているのは、低体温自体に意味があるというより、むしろ心停止後の高体温を避けることに意味があるのかなーと思っているので、心原性ショックで体温管理療法を行ってもあまり良いことはないというこのRCTの結果は然もありなんという感じがします。

(1) N Engl J Med. 2002;346:549–56.
(2) N Engl J Med. 2002;346:557–63.
(3) N Engl J Med. 2013;369(23):2197-206.