集中治療

脳梗塞急性期の低酸素血症に対するルーチンの酸素投与

Effect of Routine Low-Dose Oxygen Supplementation on Death and Disability in Adults With Acute Stroke: The Stroke Oxygen Study Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2017 Sep 26;318(12):1125-1135

◇リサーチクエスチョン
酸素投与はアウトカム(modefied Rankin Score)を改善するか。もし改善するなら、夜間のみの酸素投与の方が、持続的酸素投与よりも有効ではないか。

◇PICO
P:脳梗塞の急性期
I/C:72時間の酸素投与、就寝時のみ酸素投与、ルーチンでの酸素投与なしの3群
O:90日後のmodified Rankin Scale

酸素投与はbaselineでSpO2≦93%なら鼻カテ3L/minで、SpO2<93%なら鼻カテ2L/minで開始する。就寝時のみの酸素投与は、21時〜翌7時までで3日間。

◇試験の概要
デザイン:RCT(多施設、オープンラベル)
地域:イギリス
登録期間:2008年4月24日〜2015年1月27日
観察期間:90日
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

modified Rankin Score

◇結果
▶︎modified Rankin Score
酸素ありvs酸素なし
 オッズ比0.97(95%CI:0.89-1.05)

持続的酸素投与vs夜間のみ
 オッズ比1.03(95%CI:0.93-1.13)

酸素を投与してもアウトカムは改善せず、酸素投与の期間による違いもなかった。

その他、90日後の死亡・自宅退院・Barthel ADL indexなどにも差はなかった。

◇まとめと感想
急性心筋梗塞では過剰な酸素は再環流障害を引き起こすものと考えられており、酸素投与を行わないことの有効性を検証した試験にはAVOID試験、DETO2X-AMI試験がある。

AVOID試験は、酸素を投与しないことで梗塞サイズの縮小する可能性が示唆されたが(peakCKの低下:secondary endpoint)、DETO2X-AMI試験では臨床的なアウトカム(死亡、再入院)の改善には至らなかった(1−2)。

また、ICU患者を対象にしたOXYGEN-ICU試験では、酸素投与を控えめにすること(PaO2:70−100mmHg)でICUでの死亡率が改善することが示されており、過剰な酸素のメリットは乏しい、もしくは害になると言える(3)。

脳梗塞の急性期には低酸素血症はしばしば起こり、神経学的悪化との関連が指摘されている。低酸素血症は就寝中に起こりやすく、それを回避することで神経学的アウトカムが改善するか検証されたが、結果は予防的な酸素投与は、持続的でも就寝時のみでも効果はなかった。

数値を高く保つことは観察する側に安心をもたらすかもしれないが、それ以上の効果はなく、疾患によっては有害になり得る。

(1)Circulation. 2015;131(24):2143-50
(2)N Engl J Med. 2017;377(13):1240-1249
(3)JAMA. 2016;316(15):1583-1589