集中治療

重症のC.difficile感染症の治療は、バンコマイシンが良い

Comparative Effectiveness of Vancomycin and Metronidazole for the Prevention of Recurrence and Death in Patients With Clostridium difficile Infection.
JAMA Intern Med. 2017 Feb 6. [Epub ahead of print]

《要約》
<重要性>
メトロニダゾール塩酸塩は、軽症から中等症のクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の治療の第一選択と考えられているが、臨床的な効果ではバンコマイシンに劣る。治療の選択は、その先にあるCDI再発や死亡率といったアウトカムに影響を与えるが、これらのアウトカムを調べた研究は少ない。

<目的>
軽症から中等症および重症のCDIを、メトロニダゾールまたはバンコマイシンで治療した場合の、再発と30日全死亡のリスクを評価すること。

<デザイン、セッティング、患者>
便検査でCDトキシンまたはトキシン遺伝子が陽性となったCDIを対象とした、プロペンシティスコアマッチング、後ろ向き研究である。2005年1月1日〜2012年12月31日の退役軍人病院のデータで、解析は2015年2月7日〜2016年11月22日に行った。

<暴露>
バンコマイシンまたはメトロニダゾールの投与

<アウトカムと測定>
この研究でのアウトカムは、CDI再発と30日全死亡率である。再発の定義は、初回のCDIの診断から8週以内に検査が陽性になること。30日全死亡率の定義は、初回のCDIの診断から30日以内の全死亡率である。

<結果>
47471例(平均68.8±13.3歳、女性1947例、男性45524例)がCDIと診断され、バンコマイシンまたはメトロニダゾールが投与され、この研究の組み入れ基準を満たした。47471例のうち、2068例(4.4%)がバンコマイシンで治療され、メトロニダゾールで治療された患者8069例とプロペンシティスコアがマッチし、計10137例を組み入れた。5452例の軽症から中等症のCDIと、3130例の重症CDIでサブコホートを構成した。全集団では、バンコマイシンで治療してもメトロニダゾールで治療しても、CDI再発リスクになかった。また、全集団では30日全死亡率が低かった(調整後相対リスク0.86、95%CI:0.74−0.98、調整後リスク差:−0.02)。軽症から中等症のCDIでは30日全死亡率に有意差はなかったが、重症CDIではバンコマイシンで有意に30日全死亡率が低かった(調整後相対リスク0.79、95%CI:0.65-0.97、調整後リスク差:-0.04)。

<結論>
CDIをバンコマイシンで治療してもメトロニダゾールで治療しても、再発率に差はなかった。しかし、30日全死亡率はバンコマイシン治療群で有意に低かった。この結果は、重症CDIの初回治療でバンコマイシンを使用することを、一層正当化するかもしれない。

◇批判的吟味
・CDIの再発を8週間以内の検査陽性としていいのか??
・バンコマイシンとメトロニダゾールの選択は主治医次第。

◇感想
UpToDateよると・・・
接触予防と趣旨衛生を。アルコールは効かないので、石鹸と流水で洗った方がいいけど、本当にいいかのエビデンスはないよ。

初発では・・・
重症でないならメトロニダゾールで。
重症CDIではバンコマイシン125mg/回、4回/日を10−14日間。
改善がなければ、500mg/回に増量。

初回の再発では・・・
重症でないならメトロニダゾールだけど、バンコマイシンでも可。

2回目の再発では・・・
バンコマイシンを上記の通り。そのあと、漸減し継続していく。

という感じで推奨されています(2017年2月18日現在)。

この研究は、バンコマイシンとメトロニダゾールのどちらを選択するかは主治医次第であり、プロペンシティスコアマッチですが、調整できない要因(交絡)はあると思います。ただ、今までの流れに一致するデータだと思います。

ちなみに重症CDIとは、白血球<15000、診断から4日以内に血清Cr値がベースラインの1.5倍以上に上昇、ということみたいです。