虚血性心疾患

女性の急性冠症候群は男性より予後が悪い

Outcomes of Women and Men With Acute Coronary Syndrome Treated With and Without Percutaneous Coronary Revascularization.
Am Heart Assoc. 2017 Jan 20;6:e004319

◇論文の概要
<背景>
非ST上昇型急性冠症候群(ACS)で入院した女性は、男性に比べ臨床的アウトカムが悪い。急性期の冠動脈血行再建による侵襲的治療が、アウトカムの性差を軽減する可能性がある。しかし、早期に侵襲的治療戦略をとった場合の臨床的アウトカムの性差について評価した研究はほとんどない。

<方法と結果>
人口ベースの観察研究である。2008−2011年にカナダのオンタリオで、早期のカテーテル治療を受けたACS患者を最長2年間フォローアップした。臨床的なアウトカムは、カテーテル治療の有無で層別化し、男女間で比較した。プロペンシティスコアを用いたIPW法で調整した。入院中にカテーテル治療を行った23473例のACSを解析した。


(本文より引用)

同一入院中にカテーテル治療を行なったのは、男性では66.1%、女性では51.8%であった。傾向で重み付けされたカテーテル治療が行った集団では、1年間の死亡とACSの再発は、カテーテル治療を行なった男性では10.6%、女性では13.1%であった(HR:1.24、95%CI:1.16−1.33)。対照的に、カテーテル治療を行わなかった男女間では、有意差はなかった(17.8%vs16.9%、HR:1.06、95%CI:0.99−1.14)。


(本文より引用)

<結論>
ACSにおいて早期の侵襲的な治療戦略をとった場合、男性と比べ女性では臨床的なアウトカムは悪かった。

◇この論文のPECOは?
P:非ST上昇型急性冠症候群
E/C:性別
O:死亡とACSの再発

◇批判的吟味
男女間で死亡率は同程度。ACSの再発が女性で多い。baselineでは、二枝・三枝疾患の割合は男女で差はないが、ACSの再発はほとんどの症例で試験登録時ACSの非責任病変以外で起こっているはずなので、女性は男性より不安定病変(壊死性プラーク、TCFA、びらん)、びまん性病変が多いのか。

また、出血は同程度だが、輸血は女性で多いので、30日までのアウトカムならそれも影響があるかもしれない(12.8%vs7.3%)。

◇感想
非ST上昇型急性冠症候群では、PCIやっても女性は男性よりACSの再発が多い。女性では、遠隔期の薬物療法がより重要ということかもしれない。