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大血管手術前の血行再建

Coronary-Artery Revascularization before Elective Major Vascular Surgery
NEJM 2004;351:2795-804

大血管手術前の血行再建が、予後の改善につながるかどうかを調べたもの。

〇この論文のPICOはなにか
P:大血管手術(腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症)が予定されている患者
 Exclustion criteria:緊急手術、重大な併存疾患、以前に虚血の証明なく誌移行された血行再建、左冠動脈主幹部病変、左室駆出率(EF)<20%、高度大動脈弁狭窄症 I:術前に血行再建をするか C:しないかで O:生存率(2nd endpoind:心筋梗塞、脳梗塞、四肢喪失、透析)が変わるか 〇ランダム化について Randomizationと記載されており、層別化(statification)された上で割付されているが、ランダム化の具体的な方法については記載されていない。隠匿化(concealment)についての記載はない。 盲検化(masking/blinding)は不可能。 Outcomeの評価者は割付を知らない独立した委員会が行う。 解析者についての記載はない。 〇baselineは同等か 術前血行再建群258人(CABG99人、PCI141人)、非血行再建群252人 同等 baseline

周術期に使用された薬剤は、硝酸薬の静注が非血行再建群で多い(P=0.05)以外は、β遮断薬・アスピリン・スタチン・ヘパリンの使用で群間差なし。
table3

〇解析方法
ITT解析が行われている。

〇結果に影響を与えるほどの脱落があるか
すべての患者が解析されている

〇症例数は十分か
αlevel:5%、power:90%、3.5年生存率:対照群で75%、介入群で85%
以上より、必要症例数は559人と計算され、登録されたのは510人(91.2%)で目標とする症例数は集まっていない。

〇結果の評価
術前血行再建群:258人中予定されていた血管手術を施行されたのは225人。240人に血行再建がなされ、33人には予定されていた血管手術は施行されていない。33人の内訳として、10人が血行再建後に死亡、18人が血管手術の取り消し、5人が重症な併存疾患の進行によるもの。

非血行再建群:252人中予定されいた血管手術が施行されたのは237人。15人の内訳としては、1人が緊急CABG後に死亡、9人が予定されていた血管手術の取り消し、5人が重傷な併存疾患の進行によるもの。
figure1
結果に有意差がないため、まず症例数が十分であったか検討する必要がある。目標とする症例数の91%しか集まっていないため、症例数が不十分で有意差がつかなかった可能性がある。

血管手術後30日以内のイベントに限ってみても、死亡は術前血行際群(7人,3.1%)と非血行再建群(8人,3.4%)に有意差はない。心筋梗塞(その定義についての記載はない)についても有意差なし。(Table1)

血行再建(CABGかPCIか)については主治医任せとされている。SYNTAX試験が行われる前のRCTであり、循環器内科医によりリスクが高い患者(SYNTAX score>22)でもPCI寄りに治療方針が決定された可能性もある。血行再建の方法についても予め計画されるべきだと思う。ただ、術前血行再建群の中で、CABG群とPCI群で周術期のイベントに大きな差はなさそう。
table2