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疾患別の遅延造影心臓MRIの所見

遅延造影MRIは、心筋梗塞の梗塞部位や心筋症の線維化病変を高信号に描出する方法である。

〇虚血性心筋症
冠動脈支配領域に一致して、心内膜下あるいは心内膜下から連続性に広がる遅延造影(LGE:Late Gadolinium Enhancement)を認める。再灌流に失敗した例では、梗塞部位の辺縁にのみLGEを認め梗塞部位の内側は低信号となるMicrovascular Obstruction(MO)という所見を認める。MOを有する症例では、心血管イベントの発生率が高い。LGEが壁厚のどれくらいを占めるかでViabilityを評価することができる。
Circ 1998;97:765-772
NEJM 2000;343:1445-1453

〇拡張型心筋症
特徴的な所見はない。60%はLGEを認めず、30%に心筋中層のLGE(mid-wall fibrosis)を認める。虚血性心筋症のように心内膜下中心のLGEを認めることは稀。LGEがある症例では、心臓突然死(SCD:sudden cardiac death)や心血管イベントに伴う入院の発生率が高くなる。また、mid-wall fibrosisを有する例では、β遮断薬などの薬物療法の効果が不良である。
Circ 2003;108:54-59
JACC 2006;48:1977-1985
EHJ 2012;33:640-648

〇肥大型心筋症
70-80%にLGEを認め、右室と左室の接合部にLGEを認めることが多い。また、心筋肥厚部位にも多く認められる。虚血性心筋症とは異なり、心内膜下中心の分布を示さない。
JACC 2004;43:2260-2264

〇たこつぼ型心筋症
T2WBBにて心尖部に心筋浮腫を示唆する高信号を認める。LGEを認める例も10-20%程度あるが、心筋梗塞のように明瞭な高信号ではないため、鑑別は困難ではないとされる。

〇心アミロイドーシス
左室および右室の内膜下の広範な領域にLGEが認められる。心房中隔のLGEを認める例では、アミロイドーシスを強く示唆する。

〇心サルコイドーシス
多彩。心基部から心尖部のどの部位でも生じ、内膜下・中層・貫壁・外膜など、いずれのパターンもとりうる。

〇心Fabry病
約50%の症例で、心基部下側壁の中層から外膜側に認められる。
EHJ 2003;24:2152-2155

〇不整脈源性右室心筋症(ARVC:arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy)
右室の拡大と壁運動低下および肉柱形成が認められるが、ARVCに限った変化ではない。心臓MRIでの評価項目は、右室壁運動異常と右室容積のみ。